書物蔵

古本オモシロガリズム

『大またであるく』 上品な人はこれだから…

『大またであるく』おととい読了。日本レファレンス史における1970年代のカロリング・ルネサンス――って、意味わかるよね――らしきものを求めて、その仕掛け人とおぼしき伊藤松彦の自叙伝を読んだのだが…

ふしぎな本→固有名がない!(*'へ'*)

ちと問題ある本、というか、肝腎なことが書いてない。まづ、固有名(人名)がない。ある場合には、すでに公刊された図書がある場合に限られる。
これは意図して出さなかったとしか読めないのだが、どのような意図だろう。連載時の『みんなの図書館』読者に固有名をだしたところでわからんだろうと思ったのか、それとも、すでに公的でないことは一切かかない(つまり、秘する)つもりだったのか。おそらく後者だろうが。
一般的な意味でいちばん興味深いのは、じつはこの人、「春秋会事件」時に職員組合の執行委員長をやっていたという(ってか、これは知らんかった)。

その後突如としてやって来た汚職の“春秋会事件”に上層部も組合も大揺れに揺れた。1959年のことである。
金森館長の辞任と、折から空席の副館長人事が国会で大問題になり、与党と野党とも結び策士が横行、組合まで巻き込もうとする疑心暗鬼の日々が続く。その時期、はからずも私が組合の委員長だった。渦中にあって正常化に献身したごく少数の幹部の一人が、後日その顛末を公表したが、その中で組合が「厳正中立」を一貫して守ったことを認めてくださっている。(『大またであるく』)

「その時期、はからずも私が組合の委員長だった」ってびっくりヾ( ゜д゜)ノ゛ハァァァァァ・・・・・・・!

国会図書館の裏支配者?!

ん?(・ω・。)
にゃんでそんなにびっくりするのかって(・∀・`;)
いまは知らんが、1970年代まで国会図書館職員組合は、実は、ある種の図書館学のセンター的機能を持っていたから。ここの図書館学の学統は、図書館研究所系のもの(ト学)と、職員組合の業務研究系統のもの(図研;トケン)の2系統があった。ん?(・ω・。) 稲てっちゃんは、どっちでもあり、どっちでもなし(´ω`*) 愛書趣味系…
って、次の本を読んだことがあれば、誰だってわかるよね。

で、執行委員長は館長と同格で交渉することになっていたらしく、それだけでなく、館内野党的に全館的ネットワークから情報が執行委員長に集まっていたらしい。
だから、ほんとーはなんでも知りうる立場にあったはずなのだが…。
じぇんじぇ〜ん書いてないんだなこれが。上記の引用部がすべて。
「秘密の暴露」がない。
これは春秋会事件にかぎらず、全体を一貫している。これは、私人としては褒められるのだらうけど、公人としてはいかがなものか。

長澤規矩也川瀬一馬

などとぼやいたら友人が「これなぞサカサですね」と。

ちら見したが、すごい(+o+) あけすけ( ・ o ・ ;) さすが(o^∇^o)ノ 長沢規矩也いいワァ.*・゜゜・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*!!!!!☆
増補版(2000.11)なんかもあるね(σ・∀・)σ
長沢規矩也ときたら、
このまへのイナテッちゃん話に、

長澤さんは、育ちがいいんだナ、あけすけなんだ。川瀬さんは苦労してんだナ、腰が低いンだ

というのがあったが、なーるほど、あの川瀬一馬のやーらしいとこをプラスに評価するとさうなるのかぁ、と思ったことぢゃった。
んで、もちろん、わちきは断然、長澤規矩也派であーる(`・ω・´)ゝシュピ

上品なひとはこれだから(・∀・`;)

話もどすと、せっかく全てを――裏から――知りうる立ち場にいて、長生きして書く機会も能力もありながら、なーんも書かんまゝ死んでしまふというのは、これは上品な人の欠点である。
かくべしかくべし。
書きてしやまんぢゃ。