書物蔵

古本オモシロガリズム

入口と出口

きのうツイッターで仲俣さんとこんなやり取りをしたので転載しておく。


セレクトショップとしてのニュー古書店
新古書店と呼ばれたブックオフは、郊外型大型書店の、廉価版だったんだなぁ。
経済としてはともかく、文化としてブックオフの果たした役割は重要ですね。
私みたいな旧派からすると、その先があるとは思いますが、新刊書店にないサブカル、ちょっと前の文化といったものにフツーの人が触れる場所だったと思います。
立ち読みもある程度できたようですし。
なによりモータリゼーション化した地方では、クルマで行ける古本屋だったし。
1990年代、ブックオフに先行した新古書店、ブックセンターいとう本店によく行ったなぁ
大正期まで、東京でも町と田園は明確に分かれていたようで。
昭和15年ごろの統計では、都市部の人は郡部の人の10倍ぐらい雑誌を読んでいたらしいです。
そういった都市・村の読書格差は、戦時中の日配成立や、戦後の中間層の拡大であまり見えないようになっていったのだと思いますが。
日本の衰退や中間層の減少、ネットへの娯楽メディアの移行などで、読書格差が80年ぶりに明確になってきたのかもしれません。

M語録

わちき:素見、ひやかし、って遊郭用語だよね
Mさん:そうそう、銭のない庶民が遊女を格子窓ごしにひやかす。心無い江戸っ子が「おちゃっぴー」ってひやかす。
わちき:「おちゃっぴー」ってことば、口語でしゃべっている人、はじめて見た。

「恐喝取材」というパワーワード

書物蔵が以前から総会屋雑誌に興味があるのはご存知のとおり。『本のリストの本』でも言及した。
ところでツイッターを見ていて「暴露本」なる表現に出会い「そういや、これも<本>だなぁ」とて


文壇照魔鏡を思い出して、どっかで本文を読めぬかとネットさんさくしたが、目次しか見つからず。
なれど、目次で「恐喝取材」なる複合語を見つけた。
国文研の原本画像(部分)をみると、「恐喝取財」で、わちきが期待したような、恐喝的な取材活動ではないらしいが、それとは別にGoogleブックスを検索すると、なんと、わちきが期待した意味での用例が見つかるではないか!
これから楽しみ(^-^)
ところでけふあった編集者さん、総会屋雑誌のビジネスモデルを知らなかったので説明したら、目を白黒させてたなぁ…
日本はやはり文明化してはいるのか…

自費出版を英語でvanity pressというワケ

昨日、こんな記事をもらった。

この記事が書かれるきっかけとなったのは次の記事。

  • 「夢を食い物にするなんて〜!/自費出版"だまし"の手口/書店に並ばず誤植だらけ」『夕刊フジ』H11.4.14 p.4

この記事が転載されているので読むと、最後のところで自費出版図書館の伊藤晋という人が出てきて

伊藤さんは「自費出版は売れない」と断言し、「自分の書いたものはおもしろいと思うだろうが、自分が他人のものを買うか考えてほしい」としたうえで、「売れないことを知っているのは出版社自身なのんだから、そのことをきちんと伝えるべき」

正直、この夕刊フジの記事を読むと、被害者で、物理学研究者だったAさん(59)の感覚をちょっとうたがっちゃう。

Aさんは十数年の研究成果に自分なりのフィクション〔を〕加え、半年で物語〔英雄譚〕を書き上げた。

これがN社から十分「共同出版でいける」と言われて、気を良くして500部刷っちゃった。
論文しか書いたことがない人が初めて書いた物理学小説って……。

大盛堂書店の歴史

最近、渋谷の大盛堂書店の歴史について調べている。
特に「本のデパート」の時代。
社史もないし、意外と文献がないのよ。

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大盛堂書店

ご存知のとおり、不死身の分隊長こと、船坂, 弘, 1920-2006が、南方から帰ってから拡大した巨大書店なんだが。舩坂は戦記をたくさん書いているのに、戦後の書店成功のことが全然書かれてないのよ
(o・ω・o)
断片情報を集めるとこんな感じ。

明治45年、先代(養父)が屋台で書店を始める。
?年 店を現在のところに置く。
昭和21年? 舩坂弘が1坪の店を開く。
昭和34年 日本最初の本のデパートを開く。
昭和37年 本のデパート(本館?)を大型化して移転。
平成?年 本館をたたむ。

本館?地下1Fにあった軍装品屋アルバンは2000年ごろに軍装品部門が閉店したようである。
軍事洋書店はしばらくはやっていたようだ。
mentai.5ch.net
アルバンの広告から、大盛堂書店本館の住所がわかった
(´・ω・)ノ
渋谷区神南1−22−4
これは、レファレンス技法の一つなんだが。

あるモノ・ことを調べてうまく出ない場合には、一緒に出現する別の出やすいものを調べる、という手法がある。技法名はついていないので、いま仮に炭素太閤記法とでも名付けるが。

大盛堂書店本館のことを調べるには、アルバンについて調べればいいわけかぁ
実際、故・坪内祐三が、
『「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」 一九七二』 (文春文庫)
に、アルバンで中田商店が輸入していたアメリカのスキンマグ(当時はガーリーマガジンか?)に出会ったことを書いている。
https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%80%E4%B9%9D%E4%B8%83%E4%BA%8C%E2%80%95%E3%80%8C%E3%81%AF%E3%81%98%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%AE%E3%81%8A%E3%82%8F%E3%82%8A%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E3%81%8A%E3%82%8F%E3%82%8A%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%81%98%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%80%8D-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%9D%AA%E5%86%85-%E7%A5%90%E4%B8%89/dp/4167679795/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E5%9D%AA%E5%86%85%E7%A5%90%E4%B8%89%E3%81%8C+%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB&qid=1623330368&sr=8-1
この前までエロ本も包括的に収集する特殊図書館に勤めてて、たまにマジメな客にその手の欠本などについて聞かれたから、エロ本流通史に興味があるんだが。

そのうちの一つに海外エロ本輸入史があって。

軍装品屋の中田商店が他に先駆けて手掛けた、というのは、昨年、ネットで知ったんだった。
アルバンは少なくとも1972年には大盛堂書店本館地下にあったみたいね。
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