書物蔵

古本オモシロガリズム

「レファレンス」=「参考調査」といふ訳語の用法の起源につきて

ユクノキたんに、渋谷国忠はレファレンスサービスを「参考調査」と訳した人かと問われ、うーん(゜〜゜ )その問題意識イタダキ(゚∀゚ )アヒャと思うたことぢゃったo(^-^)o
とゆーのも、渋谷はたしかに戦前期、当該サービスを議論した数少ない識者ではあったが、大正期から使われていた「参考事務」という当時の業界言葉を使っていた。
さて、では「参考調査」なる訳語を創ったのは誰かということになる。単行本レベルでタイトルに採用したのはどうやら長沢雅男が最初らしい(ってまだご健在だから誰か聞くべきか)。その『参考調査活動序講』(慶応義塾大学文学部図書館学科,1964)を見ると、記載内容は慶応の「資料情報調査*1」なる科目名のものを本にしたものとあり、この科目は「いわゆる「レファレンス・ワーク」を中核とし」たもので、その教科書として編まれたとある。してみると、慶応でそれまで――少なくとも科目名としては――「参考調査」なる四文字語はなかったわけである。すると、長沢が創ったのか、という疑いがでてくる。
長沢は当該書でサミュエル・ロースティンの定義を紹介して、「(レファ)ワーク」と「(レファ)サービス」を区別して使いますよと宣言し、さらにこう述べる。

またその訳語として、レファレンス・ワークには参考調査活動を、レファレンス・サービスには参考調査業務ということばを当てることにする。(p.10)

しかし、「レファレンス」に「参考調査」という漢字を充てる理由については、書かれていない。
ここでググブクると、『国立国会図書館月報』第9号(1961.12)に掲載された「国立国会図書館利用規則」(規則第八号;昭和三十六年十一月九日制定)なるものがヒットし、その第五章がまるまる「参考調査」としてレファレンス・サービスに当たる事柄が書いてある。附則で「国立国会図書館閲覧規則」(昭和二十四年三月二十六日制定)が廃止されとるから、それ以前にこの用語を使っとるか否かはそれを見ればよいわけ。
ただここで思い出したのは国会図書館が最初にレファレンスの訳語として出してきた(正確にはその設立準備事務局が出した)「考査」なる語は、「参考調査」の縮約形ではなかったかということ。とすると、昭和22年の段階で「参考調査」なる語があったことになるが…。
かういふバヤイにはフルテキストDBを浚ふてふことになるが、さっそくその代表たる「国会会議録DB」を見たらば、昭和28年に用例を見つけたり(o^ー')b もう十年以上まへから、いともマジメなる国会会議録DBをバ、すちゃらかリファーするためにわちき、つこふとるんよ(・∀・)

従来の図書を並べて置いて見せるという閲覧図書館の殻を破つて、人々が知ろうとし、又研究しようとする事項について、これに関する資料なり文献なりの名称所在等を調べて教えてやるとか、或いは要求する事項そのものを調査してやるというような参考調査図書館としての機能を発揮する新しい方法に向かいつつあるということでありまして…
第15回国会参議院 図書館運営委員会会議録 5号(昭和28年2月3日)

かやうなことを金森徳次郎がいふてをる(σ・∀・)σ
うーん、しかしこれは、「調査及び立法考査局」という、レファレンスと調査(リサーチ)を一緒にやる部署を配下にもっとる館長さんならではの言い回しかすら。ちなみにこの局の局員になると「調査員」といふ職名が発令され、なにやらエライ人であるかのように思はれてしまふが、実態としてさうでもない。もしさうなら、百人全員、大学教授・助教を発令せねばらなんことになる。むしろ実態は考査員(レファレンサー)であって、やっとることはほとんどレファレンス・ワークだったりも。そもそも「レファレンサー」なるカタカナ語は、どうやら昭和20年代の立法考査局の局員が造った言葉らすぃ〜しね。

*1:しかしこの語もなんだかヘン。おそらく資料調査+情報調査なのだろう。「文献調査」ぐらいにすりゃあよかったのにね。