書物蔵

古本オモシロガリズム

岡田温が見た長澤規矩也

長沢規矩也と「中学校以来旧制の高等学校も大学も同じという旧友であった」岡田が、こんなことを言っている。

  • 岡田 温 「長沢規矩也君を偲んで」『書誌学』(28)p81〜84(1981-07)

長沢君はK君のような厭人家ではなかった。変わっていたといっても何一つ奇行があったわけではなく、むしろ真面目一方の堅物で、われわれ生徒仲間より、どちらかといえばいつも先生の側につくということから、いつとはなしに変り者扱いをされるようになっただけのことであった。

明確な奇行はなかったという。ただ直後の図書館短大時代の回想では、和服で通すなど、自己のスタイルには相当固執しているように見えるが(σ^〜^)

しかしこうなったのには、いささかわけがあったように思われる。というのは彼の祖父君に当る長澤亀之助という方は、当時名立たる数学者で、長澤亀之助著の代数学の教科書といえばその頃多くの中学校で使用されていた。そんなことから長澤君自信がうしろ先生たちのほうにとりこにされて了ったのではなかったかと、今にして思えば気の毒にも思われる。

偉大なおぢーさんが、規矩也のヘンテコスタンスに影響していたのではないかという見立て。さすが岡田。

彼自身当時から人に対しての好き嫌いのはっきりしていてわがままではあったようだが、彼の本心はむしろ人懐しがりやの淋しがりやではなかったろうか。(p.82)