書物蔵

古本オモシロガリズム

国立マンガ図書館に吉報! ぜひ納本スヘシ(・∀・)

いちど友人の論をそのまま借りて国立まんが図書館の設立提言をしたことがあったけど。
ログをみるかぎりオタクだらけのネットなのに反響はほとんどなし(まーこのブログの読者にオタクがいないのかも)。館員にもオタクってのも意外といないのかもね。
それはともかく…
提言では,コミケットの事務局から寄贈をうければいいとか,いま集めないと集まらないとか言っておいた。
きょう噂で聞いた話では,じつは事務局がすでに大量の同人誌を保管しているらしい。事務局がなんのために同人誌を納入させていたかは知らんが,とにかくブツとして残っているというのは,これは吉報ですぞ。
納本機関はさっそくに寄贈をうけ国立マンガ図書館を設置するがよい。

そういえば納本制度について

現在ただいま,たまたま国会附属図書館がやっている法定納本だけど,これについての本って実はほとんどない。
国会の連中がホムペやチラシに書くのは実務の,それも断片的な解説にすぎないから全体像や欠点はわからん。
いちど,トンチキFAQの行政学的解釈なんてのもしたけど。
あそこの官僚がもちっと気が利けば,「納本法制研究会」とか隠れ蓑にアルバイトしてコンメンタール本が出版され,それを踏み台にまともな議論ができるはずなんだけども,それもなし。
結局いままでは,山下信庸とか実務出身で構想力がある人々の(おもに歴史的な)記述を材料に考えるしかなかったわけだが…
じつは近年,1冊出てたんだわ,納本制度に関する研究書が。
電子時代の出版物納入制度 : 情報の自由な流れにむけて / 原秀成著. -- 学文社, 2001. -- (官庁資料の公開 : 情報利用の民主化をめざして / 佐藤隆司, 大庭治夫, 後藤嘉宏著 ; 2)
これ,ほかの本と抱き合わせみたいなかたちで出たから書誌記述がごちゃごちゃして参照しづらいんだけれど,かなりしっかり書き込まれた本。原秀成(ひでしげ)氏の単独著作といっていい。
なんで単独で頒布されなかったのか不思議な本。これでは埋もれてしまう。
いま拾い読みしてみると,タイトルに反して,納本制度本体の議論を歴史的経緯をきちんと踏まえながら批判的にしているところがスリリングだのう。
納本拒否した場合の「過料」の話とか,映画やスライドが納本から滑り落ちていった話とかは,歴史的事実としては知っておったが,それが法学的にはどのように解釈されうるのか,という点の指摘がとってもオモシロ。
この本が成功しているのは法系や歴史的経緯(国会所蔵の西沢哲四郎文書までこまめに見ている),立法者意思などもふまえて法学的論理を展開しているから。その点,現行法に学部でかじった教科書概念を単純適用する法匪とちがうね。

最も重要なことは,米国法の原理が変容し,しかもそれが法律外の実務においてなされることが多かったことである。米国法起源の1948年国立国会図書舘法に,〔1949年の改正とか〕つぎ木をするような改正をした。そのために著作権登録と納入とが連動せず,納入制度についても映画や特殊資料などを広く納入させることに失敗していったと考えられる。
(p.158)

実務によって法の本来の目的が曲がっていくという考え方はわちきとまったく同じ。もちろん異なる意見もあるが*1,事実関係をきちんとおさえているところはわちきにとってもとっても便利。意見より事実を(猫猫先生),じゃ。
はっきりいって,戦後日本の納本制度を語る際には必須の文献といえるが…
なんでぜんぜん有名じゃないのかな?
へんなの。
やっぱり抱き合わせだったから,これが納本制度について概観した単独著作だってわからないからじゃないのかなぁ。
タイトルもちょっとソンだと思うし。これだと,いかれた電子図書館派とまちがわれる(って,わちきがそう思ってた(^-^;))。
わちきだったら,こんなタイトルつけて紹介ちゃう。

『日本納本制度の歴史と問題点:米国法継受の失敗』
(あらまし)「公にしたものを預けるしくみ」はいかにしてただの本あつめと成り下がったか。現代日本納本制度を定める国立国会図書舘法の問題点を,戦前からの立法の歴史,海外の納本法規から分析し,きたるべき電子資料の納入制度への展望を示す。

*1:たとえば帝国図書館における保存区分(甲部,乙部,丙部)などは,事実関係においてまったく異論はないんだけれど,評価については先生はいささか陰謀史観的になっているような気が…。帝国図書館はそんな大それたもんじゃないですよ。