古本の効能書きはおわりにして,フェティシズムがらみでいうと,わては製本フェチ(って初耳でしょ)。
糸かがり綴じでホローバック(で丸背)の本で,最初にひらきぐせをつけるのはたまらく気持ちいい。これをしないと一カ所にチカラがかかって,いわゆる「背割れ」をおこすしね。
そういう意味では,多くの人によまれた図書館の本って,自然と開きぐせがついて好ましい。もちろん手垢がつくけど,あんまり嫌いじゃないんだよなぁ。だって自分と同好の士でしょ,その本を読んだ人は。ほんとにいろんな人がつかまる電車のつり革(ってもう皮は使ってないから,つり輪か)を平気でつかむんだから,これも平気だよね。
いまでも学校図書館学には「読書衛生」*1っていうテクニカル・タームがあるのは知ってるけど。
最近は,外見は糸かがりホローバックでも,中身はアジロ綴じばかりになってきちゃって,こんなのはひらきぐせをつけようとしちゃいけませんね,ほんが壊れる。そもそもそーゆー本は開いちゃいけない(笑)。
どうせホットメルト(製本用接着剤)で背固めするんなら,いさぎよく文庫本みたいにしてほしいよ。チリ(本文料紙より少しはみ出た部分)のある固い表紙もなく,まったく機能を喪失した花切れもなく,角背といういさぎよさ(でもホントは文庫・新書も糸かがり綴じにしてほしいのだ)。
だからブコフでグラインダー(ヤスリ)にかけて,小口をけずれるんだし。天金*2とか三方マーブル付け*3でもヤスるんかね?まぁそんな本はかならず表紙つきだから安心だけど*4。
本は,なにはなくとも糸かがり綴じ。これ基本。糸かがり綴じ以外のとじ方は法律で禁止してほしいよ(なかば本気)。
だれーも騒がない資料保存問題 またですか!
酸性紙問題が,図書館現象としてはめずらしく世間で話題になったのはなぜだと思う? 日本では,米国みたいに大規模には起きていなかったし,一般人が文化の保存に突如として目覚めたわけでもなかったのに。
いっけん完全にみえる物体が,そのまま崩壊していくという「イメージ」にあったのだよ。米国業界の宣伝映画に「スローファイア」ってあったけど,そのタイトルは,そのイメージをよく体現してた。
その伝でいえば,ホットメルトの耐久力の方が問題だよ。
数十年で突然,すべての本がバラバラになる。ごたいそうにも料紙は中性紙で数百年もつのに。わてはこっちのイメージのほうがこわくなってきたね。それに折り丁は破壊されてるんだから,ほんとにバラバラだよ。よよよ(涙。
どうすんのかね。まあ5,60年もてばいいか。どうせこちとら死んじゃうし。
Pre-ホットメルト時代=ダメダメ
なんていうのか知らんけど,いまのホットメルトが普及するまえの接着剤は,ダメダメ君。
わてのみるところ70年代の文庫(このまえ逝った教養文庫とかね)に多い*5。まったく柔軟性を失っているうえに(新品時に柔軟だったかはさすがに体験せず),すぐ割れる。ようするに20年くらいでダメになるってこった。
ま,この時代,まだまともな単行本は糸かがり綴じが中心だったろうから,あまり問題にならんが,いまじゃ,なんでもかでもホットメルトだよ。
また余計なことを書いてしまった… 平成文化はホットメルトの崩壊とともにこの世から消えるのだねぇ