書物蔵

古本オモシロガリズム

古本の効能

ここんとこ古本屋や即売展にいかないと一日元気がでなくなってきた。
ここ数年,いろいろあって古本から遠のいていたんだけど,なんか,古い本に囲まれてないと楽しくないみたい。
最近は新刊書店でもたのしくはあるんだけど(古い良書が続々とちくま文庫におちるからね),やっぱり,うすよごれた,わけのわからない本の山のほうが楽しい。

もちろん単なるフェティシズムじゃなくて(それも少しあるけど),時空を超えた存在だからねぇ,古本ってのは。

時空を超えてるってのは,2つの意味があって,ひとつは今も役立つ(ないし必要な)本があるってこと。これは出版業や出版行政の問題。

あることを議論するのに定番の本ってある。でも,日本の場合,それが絶版になってることがほとんど。たとえば,ビザンチン史をやるんなら,なにをおいても,ビザンツ社会経済史研究 / 渡辺金一. -- 岩波書店, 1968 を入手しなけりゃならないんだけど,絶版。これと同時代の ローマ帝国の国家と社会 / 弓削達. -- 岩波書店, 1964 は何度も重版(って増し刷りね)がかかってるのに,ビザンツはそれもなし。英語なら,そーゆー本はほぼ必ずリプリントされるよ。

最初,改装前(いまはビカビカと明るすぎ)の巌松堂(神保町)で手にとってねー,忘れもしない6千8百円だった。どうしようかなーと,つぎに買いに行ったら…,ない!,なんて苦労もあったけど。

私の古本行脚は,この本からはじまったのでした。

古本の効能のもうひとつは,異次元への旅かな。タイムトラベルね。たとえば旧憲法下では,いろいろと社会環境がちがうんだけど,図書館ってもんはあった。だからそのころの図書館本よむといろいろおもしろいよ。いまあるもんとおなじ概念を,ちがうコトバで呼んでたりして。ははぁ,そーゆー言い方もあるなぁ,いわれてみれば確かにわかるゾ,でもニュアンスがずいぶんちがくなるなー,なんて。

で,図書館言説はたいてい英米輸入なんで,原語はいまも昔もおなじだったりして。笑える。

いまとちがうもう一つの日本への旅ですね。昭和前期になると,それなりに日本帝国も繁栄してたから,けっこう日本国と比べられるンです。なんやかんやいっても,おなじ近代国家ですから。