書物蔵

古本オモシロガリズム

耳折り本から員数主義を懸念す

本を整理してたら,『一下級将校の見た帝国陸軍』(文春文庫)が2冊でてきた。これは「員数主義」についての基本ね。片方の本には,わてが盛んに耳折りをしたのが残ってる。
ここで耳折りってのは,dog ear (イヌの耳)のこと。ってもこれは英米書誌学用語。ページの角(たいていは上の)を折り込むことね。
製本ミスで最初っからおんなじもんがあることもあり。そんときは「化粧裁ち」されるまえのマージン(余白)が残ってるから,のばすとその文だけ本からはみでる。たしかこれは「福耳」とかいうんだった。
料紙のしなやかさが十分ある本の場合には,付箋紙のかわりになるから励行してる。読み終わったあと,これが少ない本は,きれいにのばして古本屋へ。多ければ参照すべき本ってことで蔵書に。
員数主義は,個人の戦記にはよくでてくる。これがバカバカしいのはもちろんとして,悪の組織,帝國陸海軍だったから,ではやはりなんかウソっぽい。
これを日本人論にまでひろげたのが山本七平の功績。つまり,戦前だろうと戦後だろうと,軍人だろうと文民だろうと,日本文化をしょった日本人の組織ならば,どこでもいつでもおきる病理だと。マジメな人が多いとあぶない。
彼は評論家なんで,ありさまを文字にするって使命をキチンと果たしたわけだけど,この現象を社会心理学経営学から分析した本ってあるかな。聞いたことナイ。
経営学が米国経営学の翻訳でしかないからか。もしかしたらドイツ経営経済学の影響なのかな。
高橋伸夫「できる社員は「やり過ごす」 」(日経ビジネス人文庫)なんていうイイ研究もあるけど,これは一部のような気がするよ。