書物蔵

古本オモシロガリズム

グラシン紙は酸性紙!

紙をつくるときのにじみ止め薬剤のせいで,紙が酸性になり,それが長い間に紙の繊維をこわしていく,ってのは(国内では)1980年代後半に有名になった話。酸性紙問題とかいわれてた憶えがある。
結局,製紙会社が酸性でないにじみ止めを使うことがひろまり(中性紙),紙本来の数百年にわたる保存性が確保され,酸性紙問題も消えてなくなったのは同慶の至り。
でも思うんだよね。本を買ってきてグラシン紙パラフィン紙,硫酸紙ともいう)をカバーにかけるとき,「これって酸性紙なんだよな〜。ほんとは保存にわるいんだよな〜」って。何年か前,「酸性紙チェックペン」でグラシン紙をチェックしたら,真っ黄っき(強い酸性)になったよ。
いくら表紙が中性紙でも,酸性紙につつまれてれば保存性はわるくなる。けど誰も問題にしてないね。
それも道理で,グラシン紙をかけるのは個人蔵書家でしかないからね。図書館じゃあそんなことしない。大学図書館みたいに函・カバーを捨てて裸本にするか,公共図書館みたいにカバーごとビニールコートでぐるぐるまきにするかのどちらかしかないから。図書館から「グラシン紙を中性紙にせよ」なんて主張でてくるわけがない。
保存が目的とかいう国会図書館大学図書館なみに一切合切捨ててきたし(コドモ分館はポリカバーを紙カバーの上からかけてるけど),各地の文学館なんて一体どうしてるんだろ?まさか,グラシン紙使ってるわけじゃないでしょうね。
個人的には,造本や(本物の)表紙をおろそかにして,ただのダスト・ジャケット(ほこり除け)にすぎないカバーに,過剰に装飾性をもたせる日本の風習はほめられないんだけどね。でも日本語の本しか読まない自分であってみれば,それにあわせるしかないわけで。愛書家はひとり不遇をかこつことになるのです。