書物蔵

古本オモシロガリズム

装丁家から本を見つけるには

田坂, 憲二, 1952- || タサカ, ケンジ氏の、

を読んだ。この記事は前半、標記文学館(以下、カナ文とする)で開かれた「装丁=菊池信義とある「著者50人の本」展」の感想なんだけど、2つオモシロいことが書いてあったのでメモ。

古本の保存には北海道がよい?

日本の古本屋を通じて古本を買った際、田坂氏が感じたことには「北海道の古書店はどんな本でも丁寧に保存している」ということと、かつて古本をたくさん見た際に「北海道の古書店から購入したものが圧倒的に保存がよかった」とも。
これは、北海道の気候と外地的性格によるものではなかろうか。
先月の札幌古本行脚にて、たしかにそのやうな感触をもったことである。

装丁家から本を見つけるには

著者や編者からなら、OPACやらで引けるが、装丁者から引ける書誌DBって、図書館業界ぢゃあ、ないよね。でも文学館系のOPACなら引けるといふのは、これは知る人ぞ知る。

日本近代文学館はさすがにフリーワードの中で装丁者名をある程度拾うことができるが、現時点では神奈川近代文学館の方に軍配が上がる。

文学書てふハ、物理的側面も含め、一個の美術品(複製芸術だが)の側面がある。漱石などは自分で装丁した話などは有名だね(。・_・。)ノ
で、OPACでは近文、カナ文を見るがよいとして、それでみつからなかったらどうするか。

装丁や挿絵の展示を見て、同じ装丁者の本を集めてみようと思っても〜〔網羅的に探すのは〕意外に大変である。

わけなのだが、田坂氏もちゃんと書いているやうに、古書目録からデータ採録された、次の本を見れば
○主題書誌

  • 装丁家で探す本 / かわじもとたか. -- 杉並けやき出版, 2007.6

近現代の日本の装丁(装画を含む)家、約1000名の作品を一覧できる目録。装丁家の多くは画家、作家、詩人等、様々な分野で活躍する人物で、名前の五十音順に排列。各項には、装丁者の専門分野、読み、生没年、略歴等のほかに各作品の書誌情報を記載する。
http://rnavi.ndl.go.jp/books/2009/04/000008579294.php

で、これまた田坂氏も気づいとるし、上記、かわじ氏の書誌の成り立ちから明らかなやうに、古書販売目録系のデータをさらえばよいということになる。
○古書販売サイトのデータを検索する

もちろん文学館系のOPACを検索するのがメインとならうが。
○文学館のOPACを検索

で、田坂氏は次のお気に入りの装丁者(洋画家)から検索例を紹介しとる。
・庫田, 叕, 1907-1994 || クラタ, テツ
神奈川文学館→約140点(ヒットは466件、重複、シリーズ集約後の値)
日本近代文学館→4点(ヒットは12件、同上)
日本の古本屋→約20点

やはり図書館・文学館のデータにこそ、装丁や装画者の情報は欲しいもの

と要望を述べるが、図書館系にはおそらく無理だろう。国会図書館なぞ、そもそも函やカバーの現物すら保存しない方針を堅持しているし、戦前から現場の館員たちは書物の物理的、美的側面には無頓着ぢゃったからの。

石黒 あれ〔帝国図書館時代に供用された図書〕も製本して図書館流の改装をしたり妙な表紙をつけたり……。だからもとのままで,発行された当時の姿のままで保存されたということで,あの乙の制度というものもそういう点で怪我の功名的な……。
岡田先生を囲んで / 岡田温先生喜寿記念会. -- 岡田温先生喜寿記念会, 1979.6. -- (図書館の歴史と創造 ; 1)
http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20050606/p2

はなしもどすと。

現段階では書誌作成の基本情報として認識されていない独自の項目であるために、神奈川近代文学館の担当者が手作業で行っていると思われる。〜その作業の困難さと、得られる情報の重要さを考えると、頭が下がる思いである。どんなに称揚してもしすぎることはない。

と、田坂氏は称揚している。