書物蔵

古本オモシロガリズム

「書評」といふ語の初出

「書評」てふコトバは、存外新しくて、一般化したのは昭和前期からであったといふハ、1990年代初頭に植田康夫氏が明らかにしたことぢゃった。

ベストセラー考現学

ベストセラー考現学

通説は昭和4年

また近年、新進気鋭のメディア史学者・大澤聡さんによりて、日本書評史が書かれんとするやに見えることは、拙ブログの読者なら知ってをらう。
そして植田氏をはじめ大澤聡さんもとりはへず昭和4年説をとり、さすがに大澤さん抔ハ、もうすこし遡れるのではてふことをいふてをる(。・_・。)ノ

事物起源は常にあとづけ

なになにのはじめ、ちゅーのは、べつに特許みたいに登録制でもなく、後世に「はて、○○の最初はいつだろ(。´・ω・)?」と気づいた人があとから調べ、そこで発見できたかぎりにおいて「どうやら、××で用ゐられたのが最初らすぃ〜(*´д`)ノ」と認定するもの。ぢゃから、あとから後から見つかれバ、どんどんドンドン遡及されませう(´・ω・)ノ
んで(=゚ω゚=)
わちきが遡及してしんぜやう( ̄ー ̄)b

『蚕』(16)(1890-04)p.27 書評 養蚕要訣 / 加藤勇治郎 についての記述
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1535253 →ちゃんと目次をクリックすること

はい、これが現在最初の「書評」の初出(σ・∀・)σ

「書評」という語の初出は、明治23年ぢゃ!ヾ(*´∀`*)ノ゛キャッキャ
2014/10/20(月)のいま、ここでわちきが決めたのぢゃ( ^∀^)
これでイーノダ(。・_・。)ノ

現在の通説、昭和4年説を一気に40年も遡ってしまったc(≧∇≦*)ゝアチャー
おなじ雑誌の前後の号には書評はなくて、2号まへの14号で使はれとる用語は、

新刊批評

うーむ、かやうな養蚕の雑誌に「書評」てふ語の初出が見つかってしまふとはとは(^-^;)
でも、すなほによろこんぢゃふ∩(・ω・)∩ばんじゃーい

(以下2014.10.25以降に追記)孤立例なのでは…(σ・∀・)σ

などと、よろこんではをれないのよこれがウン(*-ω-)(-ω-*)ウン
ここでの論点はいくつかあるが。

まづ、この「書評」の使用事例は孤立例であること。ことばてふものは、ある程度―さう、1業界ぐらひ―広く用ゐらるるやうにならねバ、使はれたとは、実は言い難い。
さすれば、この明治期の「書評」の事例は広がりがあるのかといふと、さうでもなささうなとこが、拙ブログの「書評」起源論で弱いところ。

ではどこらへんで使はれるやうになったのか?( ・ o ・ ;)

本についての評判記は、通俗小説についてもあらうし、それが一般新聞紙に載せられることもあった。それに明治期にはすでに書評専門雑誌『出版月評』が成立してゐる。
植田康夫の1990年代の調べによりて、『史学雑誌』1929(昭和4)年1月号から使はれとるんだけど、そこいらから広まって学術界で使われ始めたものらすぃ〜
小野武夫 著 郷土経済史研究提要 (時潮社, 1934) 書評乎論爭乎
ジイド全集. 第12巻(金星堂, 1934) 書評 ?
小幡重一 著 響 (相模書房, 1938) 書評と音樂批評 (初出:昭和11年10月帝大新聞)

書評といふコトバを使ひながらも、「新刊書評」「新刊批評」といった複合語も使い、オモシロい。 図書

矢崎弾 著 文芸の日本的形成 (山雅房, 1941) 新刊書評と出版文化

雑誌の小説月評では辛辣な批評家も書評では一定のスタイルになじんで儀礼を尊び、出版屋の書いた宣伝文に署名しジャーナリズムの常識を尊重しながら、一方で文化は頽廃してゐるなどと叫んでゐるのが日本的風習である。(初出は1940.5)

文芸時評」のことを「雑誌の小説月評」と、やや古風(?)な呼び方をしているのがオモシロい。

中国も参照せねばの(。・_・。)ノ

あと、じつは近代西洋概念を漢訳した国は、もちのろんこと、本朝に限らず中国もさう。

【書評】【1】書法、つまり書き方の評論。南朝の梁の袁昴が…【2】書物を評論あるいは紹介する文章。朱自清『短長書』「いわゆる書評と批評は紹介を含むが、現在、書評が欠乏している、〜さらにちゃんとして公正な批評はなおさらだ。冰心『晩晴集・空巣』
名家に頼んで一篇の書評を写し…
?竹?主? ; ??大?典??委?会, ??大?典?纂??纂. 漢語大詞典. 第2版 ??大?典出版社, 2001.9. 第5卷 上册 p.723

朱自清(しゅ・じせい、1898 - 1948)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%B1%E8%87%AA%E6%B8%85
冰心(ひょうしん)(1900−1999)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=1005&f=column_1005_001.shtml
どうやら戦前らしいくらいしかわからんねぇ。。。

折口信夫らによる昭和4年の「書評」宣言!

『史学雑誌』昭和4年1月説を通説・定説ではあるんだけど、史学雑誌の連中がどういふつもりで「書評」てふコトバを使ふたのかは不明ぢゃった。
ところがぎっちょん、「どーゆーつもりで<書評>なる語を使ったのか明言している雑誌が同じ昭和4年のものに見つかった(゚∀゚ )アヒャ

「書評」は、本誌の誇の一とするところ、新人を学会に紹介するという点以外、世間ありふれのも?の?と同一視せられないことを希望する
「編輯後記」『國學院雜誌』35(4)=(416) p.105(1929.4)

ほへほへー( ・ o ・ ;)
おなじ号に「新刊紹介」てふ記事もあるから、彼等は、「世間ありふれのもの」つまり「新刊紹介」とは異なるべき立派なものとして「書評」なる語を提起してをるてふことにならう(゚∀゚ )アヒャ
そしてその彼等てふも判明するのぢゃo(^-^)o

編輯評議員 宮西惟助氏 石川岩吉氏 神崎一作氏
編輯委員 山本信哉氏 堀江秀雄氏 植木直一郎氏 河野省三氏 折口信夫

このうちの誰かに聞けばわかるのではあるまいか…(。・_・。)ノ