書物蔵

古本オモシロガリズム

著作権法の特別法:映画盗撮防止法

「ネット時代の著作権」『出版ニュース』(2007.9中旬)に「映画の盗撮の防止に関する法律」(通称:映画盗撮防止法)の解説がある(吉田大輔氏)。それによると、これは著作権法に対して特別法の関係にある法律で、著作権法30条1項(私的使用目的の複製)を、映画の場合は認めないというものだという。
もともと、著作権法30条1項のほうでも、私的複製を認めないもの(適用除外)を2つ*1決めているんだけど、それらは著作権侵害で違法ではあるが、違法性が軽微なんで罰則はなかった。今回、映画の私的複製は違法とするだけでなく、罰則もあるようにしたというわけ。
著作権法の特別法なので、防止法違反の罰則は、著作権法の定めによることになる。著作権侵害罪として10年以下の懲役又は1千万円以下の罰金(2007.7から施行)。
ただ吉田先生のいうところでは、封切り後8ヶ月したら適用されないなど、海賊版取り締まりのための限定的な立法なので、現在進行中の議論(私的複製の範囲をめぐるもの)への「影響は小さい」という。

特別法は一般法に優先する

って、べつにわちきは映画産業のまわしものじゃない。
特別法と一般法の話をしたいのだ。
法学出身でないわちきにフシギだったのは、日本法の形式。まるで単行本のようにそれぞれにタイトルがついていて、あたかもタイトル単位で一著作であるかのように見える。
いや実際、管理はタイトル単位でされているわけだが。法の適用(行政指導や裁判の判決)にあたっては、実は個別の条文(スレッド)が相互に関係しながらも個々に影響を与えるのだ。
なにをいいたいかというと、著作権の権利制限やその適応除外や罰則について、べつに「著作権法」で定められていなくても原理的にはかまわないということ。
もっと具体的に言わねばワカランか。
たとえば、著作権の権利制限の条項が「図書館法」というタイトルのとこにあっても、ぜんぜんかまわんということである。
1950年図書館法のときに、なんかの拍子で公共図書館における著作権制限の特権が付与されておったらば…
もちろん、現在までの日本はそうではなかったし、これからも当分はそうだろう。けど、現・日本法システムの原理がどうなっておるのか、というのを知っておくことは、ほんものの図書館法研究には必要なことだよ。
道理(条理)があり、政治家(図書館族議員)がおり、役人(図書館官僚)がおり、業界団体(日図協)もしっかりしていれば、映画盗撮防止法のように、現体制下でも著作権法の特別法だってできるのだが(*゜-゜)
どれもノーだね。
その時々の現行法制の、有権解釈や学理解釈(の多数派)をわかりやすく言い換えるだけというのは、研究ではないよ。啓蒙ではあるが。

*1:お店のダビング機や自分のパソコンでやる私的複製と、プロテクトをむりにはずしてやる私的複製。ただお店のコピー機はこの適用除外からさらにまた除外されていて、当分の間は違法ではない。