書物蔵

古本オモシロガリズム

失われた1980年代

失われたのは日本の図書館政策。

どのつらさげて

図書館雑誌の今月号をみる。「特集・最近の海外図書館事情を探る」とあり、数カ国の事情が紹介されているが… その内容はともかく、それぞれの国にかならずでてくるのが、図書館のことを司る国家機関による強力なイニシアチブ(政策・カネ)のこと。
ここの事例では

英国:英国博物館・図書館・文書館国家評議会(文化・メディア・スポーツ省の諮問機関)
フィンランド:教育省が経費の半分ちかくを国庫補助
シンガポール国立図書館委員会(NLB ; National Library Board)
韓国:図書館情報政策委員会

など。
はぁ…
1980年前後の「図書館事業基本法(図基法)」を被害妄想的な館界内の左翼勢力がつぶしてしまったという歴史的事実を忘れちまって,いまさら諸外国の,国家によるイニシアチブをもちあげるかのような特集ってのもどーかと。総括せい!
国家の関与が悪だという考えの延長上に館界があるんなら(それはそれでわちきはひとつの考えだと思う),これら諸外国で国家が介入してケシカラヌ!と言うべき。これぞ清貧の思想。
って館界は健忘症なのか?

まぼろしの図書館事業基本法(1981)

図書議員連盟とか図書館協会の政策委員会とかでこんなん作ったんよ。

図書館事業基本法要綱(案)1981年9月

この法案要綱にによれば,全館種の図書館を対象とし,学校(大学)図書館と公立図書館は義務設置にすする。内閣直属の「図書館政策委員会」をおき調整をさせる。専門職員の義務設置。県・道単位の共同保存図書館の設置。さらには「図書館振興財団」の設立まで盛り込んである。
('0'*)ほよー いまあったらなぁと思うものが全部あるよ
もしこれが通っていたらなぁ…
カネあまりの1980年代に,直営方式でイイ図書館が全国に普及したのに…
なんで反対したのか,いくら反対論を読んでも,いまとなってはぜんぜんワカラナイ論理ばかり…
どーやら,「国」や「コンピュータ」自体がキライだ,ということはわかったけど…
って,この図基法(ときほう)案,『季刊としょかん批評』って雑誌の1982年創刊号のがいちばんまとまった参考文献(それも反対派の)なわけだけど*1,この雑誌をやってた人たち,まんま『図ぼん』に流れてるよね。

*1:これは根本先生がすでにまたチョロっと指摘ずみ。