書物蔵

古本オモシロガリズム

もうひとりの稲村さん,十進分類に挺身す

研究と動員 / 稲村耕雄. -- 日本評論社, 昭和19. -- (日本評論叢刊 ; 5)
西部古書会館(高円寺)で買う。姓にひかれて本をひらいたら,2章ほど十進分類について書いてあったんで図書館本に認定。カードをつかえ,とかUDCをさかんに誉めていたりしておもしろい。戦後米国のワインバーグ報告みたいなものですな。

研究の組織化にはカードが,あまりバカにできない役割をもつてゐる。カードを生かさうとすると問題になるのは分類である。現在わたくしが直接戦力増強のために全力を注いでゐるのも実はこの分類法の完成である(p.81)

イナムラ・ヤスヲ氏の分類法が完成したって話は,図書館学説史オタクの私でも知らないなぁ〜。あ,だから日本は負けちゃったのか(^-^*)。このかた,戦後,色彩論の専門家になったみたい(著書『色いろは』ってダジャレ?)。戦力増強のための十進分類ぜひ完成させてほしかった……?。
いま漫画雑誌『モーニング』で連載中のかわぐちかいじジパング」はタイムスリップものだけど(戦国自衛隊みたい),ちょうどいま日本の原爆開発のところ。やっぱり科学動員には十進分類?!
稲村徹元さん(書誌学者)とは関係ないみたい。徹元さんのおとうさんは稲村坦元さんといって埼玉の郷土史家みたいだし。それにヤスヲさんとテツゲンさんでは気風が逆さですね。徹元さん曰く…

仕事のマニアル[ママ]を超えたノウハウは,当節,パソコン・インターネットでカバーできるから……と安易にクリッピングを止めたがる施設の管理者には頂門の一針となろう(「切抜帖趣味」『スムース』(10)2002.9)

と,このように徹元さんが最後には職人芸を擁護しているのに,ヤスヲさんはもっと単純に,後年のドクメンテーション的な感じだし。ところで徹元さん某国立図書館の新切り廃止に怒ってますね(これについては再論予定)。

20190715追記:

文献継承の連載で、全科技聯のUDC運動が、そのまま衆議院調査部の新聞切り抜きにつながっていて、それはNDL新切り(しんきり)に持ち込まれ、1984年までUDCで国会が新聞切り抜きを排列していたと判明。
してみると2005年に稲村ヤスオと稲村テツゲンを無関係としたのは早計で、まわりまわって関係があったんだなぁと、ちと驚く。