書物蔵

古本オモシロガリズム

「○年○月○日印刷納本」といふ印刷

実務書の批判的読み解き

やっぱり現場系の書物、ってかある種の実務書、実用書を、読み飛ばすのではなく、じっくり分析的に読むのってーのは必要なんだなぁ…
法定文字や奥付に刷り込まれたる「○日印刷」ならぬ「○日印刷納本」といふ印字。これは実定法上の義務ではない。「納本日」は表示する義務はない。
ではいつごろから、といへばさくっとググって大正初年あたりから、まじめにググって明治末あたりからといふことはわかるのであるが。【画像】

明治四十三年十月一日印刷納本

かういふ、法定文字内にあるのに法定でない現象を法文自体にもとめたところで、in vainぢゃ。

いつもの山田くん(σ^〜^)

いつもの警視庁検閲係長、山田, 一隆 || ヤマダ, カズタカ クンに出てきてもらほう(´・ω・)ノ
これハ新聞紙の納本手続きにつきて述べたる箇所にある、なほ書き(補足的説明)。

尚ホ発行日以前ニ於テ印刷ヲ了シタルト同時ニ遠隔ノ地ニ送行発行スルモノニ限リテ何月何日印刷納本ト出版物ニ記載シ其発行スルモノヽ如キハ寛仮セラレツヽアルガ如シ
出版警察 / 山田一隆著. -- 東京 : 文明社 , 1914. -- 308,94p ; 23cm. -- (BN09100393) ; http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN09100393 引用はp.183

これ、へんてこな文意だよねぇ(σ^〜^)σ
「なお〜〜〜のようなものは、みのがされてるみたいだよ」
って、とっても現役の検閲係長が書くやうな文章ではいまはないね。

寛仮セラレツヽアルガ如シ

ちなみに「寛仮」(かんか)とは、日国によれば「人の罪や欠点などを寛大に扱ってとがめないこと。大目に見てゆるすこと。」だそうな。この言葉、史記に用例あれど明治期からよく使われるようになったやうだ。
まあ、逆に考えればよいのである。

新聞紙と新聞紙法に依拠して届出た雑誌は、発行当日に納本すりゃあいーんだけど、「遠隔ノ地ニ送行」してから発行する全国配送紙や全国的雑誌には、印刷日に「納本も同日したよ」と表示するものがあるねぇ。と私、山田は大正3年の段階で認識しているよ

とわかるだけでとりあえず十分なのである。
もちろんその先に、検閲当局の指示もないのに――もし山田がそれを知らないとすれば、こりゃあ㌧だ検閲係長さまぢゃ。だからなかったらうといへる――なぜ発行者は印刷所に「納本印刷」などと刷り込ませたのか? いったい誰にそれを読ませたかったのか、についても推論せねばならんのだけどね。