書物蔵

古本オモシロガリズム

思想統制もマジメにやると現場はイソガシ・いそがし(^-^;)

戦前はちゃんとした(?)政治警察(トッコー)がいたのはご存じのとほり。
んで、つれづれに古本をあさるべくネットを見てたら、こんなんがころがってた(*´д`)ノ

これは1936年に警視総監から各警察署へ出された内密の規定。その46条に出版史に係る条項がある。

出版届書だけでは情報が足らぬさうな( -Д-)ノ

第六章 新聞、雑誌、通信社、印刷所、組版所及製本所
第一節 新聞、雑誌及通信社
第四十六条 保証金を納めて発行する新聞、雑誌及通信社の管轄警察署は其の初号発刊後五日以内に別記第二十一号様式の名簿二部を作成しその一部を進達すべし

なるほど。時事が載る可能性がある新聞・雑誌・通信が管内で創刊されたら、一緒に出版社から出される届書の記載内容だけぢゃ(思想統制上)不十分だから、所轄が別途その出版社(のその媒体)のことを調べろ、という規定だねぇ(゜〜゜ )
所轄署がいそがくなっちゃって、現場はこまるよ。

こがいな細かい事項まで

で、ちゃんと第二十一号様式がでてくるね。

第二十一号様式(第四十六条の規定に依るもの)(用紙美濃判洋紙)
秘第 号/昭和 年 月 日/新聞雑誌通信社名簿 警察署名
〔題号〕
主義又は目的 機関として利用する者 操縦者 裏面的関係者 脈絡 創立年月日 社長又は持主 資本主 資本金高 発行種類 維持方法
発行所 発行部数 社運盛否 備考

ほほぅ(゚∀゚ ) 操縦者とか裏面的関係者とか脈絡とか、出版史にやくにたちまくりの項目が立項されとるでないの(σ・∀・)σ
でも、これらをマジメにしらべてたら、とくに神田警察なんか忙しくてしやうがないんぢゃあ、なかろうか(って、もちのろん、神田警察の公刊史は調査済みだが、でてこんのよこの手の記述が。むしろ地方の警察史のほうに出てくる傾向あり)。

印刷所も廻れとなっ(*ω*;)´´

この内規には

  • 情報係執務内記取扱に関する件(情秘第二二五〇昭和十一年十一月一日)

といふもんが官房主事から出されている。
そんなかに、印刷所もまわって印刷物を調べとけ、ちゅーのがあって、次のようなハイペースで調べるよう決められちゃってゐる(σ^〜^)

二.内記第五十一条ノ印刷所、製本所等ノ視察に当りては左の標準に依り視察回数を定め視察をなさしむること
(一)名刺類を印刷するものは三箇月に一回以上
(二)各種商店、会社等の帳簿洋紙伝票及広告引札のみを取扱ふものは二箇月に一回以上
(三)機関雑誌教科書等にして注意を擁せざるもののみを取扱ふものは一箇月一回以上
(四)以上の外一般印刷物を取扱ふものは一箇月二回以上
(五)要注意印刷物を取扱ふものは一箇月五回以上
三。内記五十二条の不穏文書とは不穏文書臨時取締法に定むるものを包含するは勿論納本の有無に拘らず不穏と認めらるる一切の文書を総称するものなるを以て之を発見したるときは直に現品を添へ広告すること
若し出版物一部のみなるときは之を検閲課に送付し其の写しを情報課に送付すること

うへぇ┐( ̄ヘ ̄)┌ 出版社だけでなく印刷所もこんなペースで廻れとは、こりゃいそがしイソガシ(*´д`)ノ

1931年から?

内規が1936年に制定された際、廃止されたものが末尾にあるなかで出版がみではつぎのものがある。

  • 新聞紙雑誌通信社一覧表並設立表調整に関する件(昭和六年十一月二十六日高秘第四二二一号)

なるへそ、少なくとも1931年からこがいな煩雑なことをやっとったんだねぇ。
まあ、ふつーの印刷物・出版物のなかから、「思想関係」だけとりだしてやってたんだらうが、それでもイソガシいそがしぢゃo(^-^)o
まあ実際、日本共産党なんかは、それまでの牧歌的出版警察の裏をかいて、赤旗(戦前の読みは、せっき)なんかを発行しとったんだけどね。警視庁の管轄を微妙にはずれる池袋の印刷所を使ったりとか、組版は記事ごとにバラバラな組版所に頼むとか、まあ、いろいろ(σ^〜^)
ん?(・ω・。) なしておみゃーは、かやうな非合法活動に詳しいのかってかc(≧∇≦*)ゝアチャー
そりは、わちきが共産主義者だからでは、ぜんぜんなく、本を読んだからぢゃ(σ・∀・)σ
本を読めm9(・∀・)
ちなみにここいらへんの裏事情がもっとも詳細に書かれとる本をば、わちきは
2012/12/17 に金沢文圃閣てふ古本屋から、にゃんと、4,000円もの大金をはたいて買ったのぢゃ(σ^〜^)

・[書名] 人間変革の記録◇青木新書
・[著者] 林田茂雄
・[解説] 初カバ218頁、やくざ・主義者・文学青年らとの多角関係/出版社の住みこみ小僧となる/「赤旗」活版化の歴史的な仕事他
・[刊行年] 1961
・[冊数]
・[価格] 4,000
・[出版元] 青木書店

でも、新書1冊に四千円はあまりに高いとぼやいたら、だれかが「めちゃくちゃ出血大サービスですよっ!\(◎o◎)/!」とさけんどったなぁ(σ^〜^)σ