書物蔵

古本オモシロガリズム

杉原四郎の偉大と限界:あるいは『明治新聞雑誌関係者略伝』に載ってない雑誌記者、編集者を調べるには

『日本経済雑誌の源流』(有斐閣、1990.5)の書評

書評の評といふのはあるのだらうか(*´д`)ノ
大阪で三冊500円で買った中に杉原四郎の『日本の経済雑誌』があって、その伝で、杉原も合流した『日本経済雑誌の源流』(有斐閣、1990.5)の書評を読んでみたら、勉強になるしオモシロいしでわいわいじゃ( ^∀^)

  • 金沢幾子「<書評> 杉原四郎編『日本経済雑誌の源流』」『経済資料研究』(1991), 24: 117-121(1991-09-30)

こんな本も出しとる人みたい(。・_・。)ノ

  • 金沢幾子 [著]. 児童文学の中の図書館. [金沢幾子], 1994.10. 98p ; #KE129-E13

書評によれば杉原『日本の経済雑誌』は物集賞(第3回)を貰ったのださうな(*´▽`)しらんかった(^-^;) 金沢は「源流」の出版企画は10年まえに『書誌索引展望』で知ったという。
それはともかくこの書評、かなりちゃんとした分析をしていて好感がもてるもので、昨今の――学術誌、特に図書館系の――書評は批判のない自殺的書評なれば、昔は学術界といふのは今よりも表面上はちゃんとしとったのかしらと思ふたりもする。例えば金沢は、この本の出版史的側面を人名索引の分析から切り出してきている。こんなふうに…

3.人名の情報について
 本書の索引に掲げられている人名は592名である。同時期に出版された杉原四郎氏の『日本の経済思想家たち』(日本経済評論社〉の人名索引と重複する人名は72名(12%),旧著『日本経済思想史論集』未来社1980)では97名(16%),両方を合わせて相互の重複を除くと129名,本書の約20%が経済思想家に属する人名と判断されよう。残りの大半は農業,商業,貿易など各専門分野の研究者や論文執筆者が主であるが,

と、人名索引に採録された約600人のうち約2割が(純粋)経済思想家で、残り8割が他分野の産業系の人だとしているが、その中に、

雑誌の編集や刊行にたずさわった人名も採録されている。宮武外骨・西田長寿の『明治新聞雑誌関係者略伝』(みすず書房1985)と重なる人物は50名〔内,思想家と重複するのは田口卯吉など18名〉これ以外に索引から本文を照合して編集及び発行関係者とわかった人名は111名(内,思想家と重複するのは河上撃など8名),

と、出版産業関係者(つまり出版人、具体的には雑誌編集者、雑誌社経営者)がいるとし、

従って明治,大正,昭和期のジャーナリズム関係者は161名で約27%である。

と、3割弱がメディア関係者だと指摘する。経済雑誌史研究書なのだから、ある意味あたりまえだが、金沢は

この数値は大きく,雑誌の編集関係者にきちんと言及している点は本書の特徴の一つである。宮武,西田両氏の後を継ぐ資料が作成される場合には,本書はその基礎的なデータを提供することになるであろう。

とも指摘する。言外に雑誌編集者にきちんと言及していない雑誌史があることをにおわせ、かつ、明治大正期の編集者を調べるには必須かつ唯一のレファ本『明治新聞雑誌関係者略伝』で判るのは、そのうち1/3だけで、残り2/3の約110人については、この本からしか(すぐには)わからないと指摘しているわけである。
つまり、

『明治新聞雑誌関係者略伝』に載ってない雑誌記者、編集者を調べるには、『日本経済雑誌の源流』の人名索引を見るとよい

わけだ。

なさけなや日本の学術:なんで一般雑誌史を標榜せんの(。´・ω・)?

 しかし杉原といひ、評者の金沢といひ、なして「社会科学」やら「経済(学)史」やらの枠組み内にとどまるのか? ここまでひろく雑誌をあつかうのなら、一般雑誌史としてしまへばよいのに、と思ふのが今の人であらう。それは現在、出版史や出版史もどきは大はやりの気配を見せとるのに、ぢゃあ、文学史でも経済史でも法制史でも、なんの○○史でもない、ただの出版史でメシ食うとる人、この世に何人をるの?っちゅー疑問を立てれば、答へはおのづから明らかとならう(*´д`)ノ わちきなんて図書館情報学で絶滅しかかっとる「図書及び図書館史」でやっとるにすぎんしねぇ…┐( ̄ヘ ̄)┌ 出版学ちゅーもんは、もともと(先進国に)ないし…(゜〜゜ ) けど、国内ぢゃあ実は雑誌研究は日本出版学会がイチバン盛んだったといふ皮肉…

26ひく3は?

1991(平成3)年に金沢は、

宮武,西田両氏の後を継ぐ資料が作成される場合には,本書はその基礎的なデータを提供することになるであろう

と予言したわけである。
で、今は2014(平成26)年なわけである( -Д-)ノ
ん?(・ω・。)
26ひく3は???
ヲイヲイ! 23年間、雑誌史研究では、かういった基礎的部分はぜんぜん進んどらんぢゃあ、ないのΣ(゚◇゚;)
しかし、宮武, 外骨, 1867-1955 || ミヤタケ, トボネ やら、西田, 長寿, 1899-1989 || ニシダ, タケトシ やらの枠組み内でしかまだ動けんとは、日本の雑誌史研究って…
などと悲憤慷慨す( -Д-)ノ

少年老い易く、学成り難し…

わが国の出版史の研究は、従来、単行本中心に進められ、逐次刊行物では新聞に重点が置かれていた。(略)種類が多種多様で、(略)そのために本格的な雑誌研究が発展せず、その立ちおくれが出版史のみならず現代史研究にブレーキをかけてきたのである。

と言ったのは杉原四郎(甲南・関西大学名誉教授:当時)。
あれれーぇΣ(゜∀゜;) これとまったくおなじよーなことを大澤さんが2010年にいっとるね。
http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20120205/p3

2年まへのわちきも、まさしく杉原四郎の言葉を引用しつつ、まったく同じことを嘆いてをるね(σ・∀・)σ