書物蔵

古本オモシロガリズム

「初版」自体をとばしちゃう版数とばし

昨日のコメントへの返信、長くなったのでここへ移植するだす(o・ω・o)

人魚の嘆きさまへ

>最初から初版本を作っていない場合
ははぁ…(・o・;) これは思いいたりませんでした(^-^;)
売れているように見せかけるために「版数飛ばし」をする、という話は、以前、浅岡邦雄先生のご講演で聞いたので、「版数トバシ」って当時の業界語ですか、先生の造語ですか、と質問したことがありました(たしかお答えは造語だったような)。
「浅岡:各出版社が広告で挙げている第何版という版数とか部数は、まず大体は上乗せしてあると考えたほうが正しいと思うんです。」(『日本出版史料』第10号、2005、p.6)

ですが版数の1番目である「初版」自体をとばしちゃうというのは私の想定外でした。

>初版本コレクターにとって、「初版がない」というのは由々しきこと
なーるほど、たしかにそうです。
結果としてコレクターさま方に、そういった出版史上のオモシロいネタが知識として蓄積されてきたのですなぁ…

>初版を作らなかったという信頼できる証言
おお、これはビックリです。もし、なにかの資料に書いてあったものならば、そのうちでよいので文献をご教示いただければ幸いです。というのも、なぜ初版からの版数とばしということをしたのか、その動機にどんなものがあるのかなぁと思いまして。やっぱり売れてるとみせかけるためかしら。

荷風「二人妻」奥付をみたら、たしかに奥付印刷日、発行日に白紙が張り込まれ、

 大正十二年六月[十八]日印刷
 大正十二年六月[二十]日発行
 [            ]
 ※[ ]は紙の貼りこみ。[十八]と[二十]は同じ1枚で、隣の紙との関係から貼ったあとで、活字を押印したことがわかる。

とあります。昭和期の訂正だと、発行者の訂正印もありますが、大正期は数字だけ直せばよかったんですのぅ。貼りこみも、地の印刷の活字と同じものが使われているので、納本に持っていく前に印刷所あたりで細工したのでしょう。また、左横のドでかい貼りこみは、重版印刷日、発行日を隠すためと思われます。

「南京新唱」は次のごとくです。

 大正十三年十二月十二日印刷
 大正十三年十二月十五日発行
 [            ]

「大正/13.12.15/内交」と帝国図書館の受入登録印があるので、ほんとに12/15に発行されたかもあやしい。

>国会本のみで流布本を語ってはいけないという
まったくそのとおりなのです。ですが、意外と知られてません。研究もはじまったばかりで、参照しやすい便覧なんかが望まれるところです。

オモシロねたありがたいです。