書物蔵

古本オモシロガリズム

印刷所ないし印刷人の歴史

「う」の人は以前から明治初期印刷物については印刷所も書誌記述に入れてほしいと云ふてをる。
出版社の歴史は、まづ以てその出版物自体が史料になるてふことハ、これはMさんの言ぢゃった。
出版物自体でも特に重要なのは奥付であるわけで、その中で、今まで活用されとらんかった情報がいくつかあるなかに、印刷所ないし印刷人がある。
たとへばわちきが考究しとる「自費出版」の歴史。

非営利出版(=自費出版
_官版(官庁出版)の大部分
_私版(民間出版)の一部
__自費出版(=個人出版
___委託出版(=自費出版):紙、印刷、製本などの手配は出版社に頼む
___自費出版:紙、印刷、製本の手配まで出版社に頼まず自力で
__私家版:必ずしも著者=出版者でない
__同人雑誌
__機関誌、会報もの

このシソーラスもどきの、自費出版の場合は、図書目録法では出版者は設定されず、かはりに代用として印刷者が採録されることになっとる。
また通常の委託出版(=自費出版)においては、フツーの出版社は利が薄く手間ばかりかかる自費出版を受けん傾向は戦前にもあったんで、特定出版社に収れんする。そしてその場合、地方では印刷会社が委託出版を受けるという傾向は、これは自明のこと。
それゆゑ、自費出版史の解明に印刷所の歴史はきはめて有用なはずなのである。