書物蔵

古本オモシロガリズム

戦前期「納本」は10部も!(*ω*;)´´

発禁処分の全体像を描いたフローチャートがある、なんて知ってた?(σ^〜^)

しばらくまへ、森サンに「発禁のフローチャートなんてないかすら(*´д`)ノ」と聞いたら、なんともあっさりと「ありますよ(´∀` )」と答へられ、なんともびっくり:(;゙゚'ω゚'):したことだったが。。。
つれづれに、なんとΣ(゜∀゜;) ネットにその画像があるぢゃないの(">ω<)っ))
http://www.personal.psu.edu/jea17/JEA/Jonathan_E._Abel/Research.html
びっくらちょ(・o・;)
このページの右上の図がそれ。『文藝市場(いちば)*1』の昭和2年8月「暑苦〔ショック〕号」の表紙ね。JPG画像でゲットできるので、いったんPCにもってきて拡大して見ると超オモシロいよ。
ってか、このジョナサン・アベルエイベル先生ってば、比較文学助教授さんらしくて、もっと驚きなのは、別のページをみると、『戦間期日本における検閲アーカイブス(英文)』なる本を2012年の秋に出版予定とか。びっくり(*ω*;)´´
森サンがよく、一人知っていれば十人は知っているとみるべき、といふてをるが、まさしく慧眼の士は海外にもおったことですの。ってか、発禁本研究ではこのフローチャート、もしかしたら有名だったのかすら。。。

神秘をあばく

梅原北明が作ったのか、フローそのものは図を見てもらうとして、表4にある文章をここに翻刻せん。

神秘をあばくと云ふ事は吾れ人ともに変に
力こぶの這入るものであります
其処で私達も御他聞に漏れず大骨折って一つの神秘を
諸君の眼前へ引きだして見せませう
雑誌が禁止を食ふにはどの位の手数と手間と時間と
経費とがかかるか御存知ですか?
電報料丈だって大低なものではありません
とに角雑誌が出来ると 先づ
内務省二冊、警視庁一冊、区地方裁判所
二冊、東京逓信局二冊、差出局二冊、
所轄署高等出版係一冊、都合十冊
を納本します
それからの経路が所謂神秘で普通の
人には解らぬ事実であります
とっくりと下図によって如何にお役所に仕事が
綿〓〔密?〕で面倒臭いか御らん下さい
(以下略)

これまでの検閲史研究からズレる事実がいくつか判ってオモシロい。

出版史いまだし!

まず、雑誌出版社がわから「納本」は合計10冊ですよ、と言っている件。いままで検閲事務についての研究は、主に法制史や思想史から、法規を基にしたものと、図書館史などから帝国図書館コレクションを基にしたものの2系統しかなく、出版する側からの出版史のアプローチは始まったばかりである。
納本、そりゃー内務省に2部だよ、とか新聞・雑誌ならあと3冊で計5部ね、とせいぜい法規どおりのことを書いてあるだけであった(いや、それで「まちがい」ではないけれど)。

東京逓信局二冊、差出局二冊、所轄署高等出版係一冊

この部分がまるまる法制史的なアプローチからは出てこんね。
しかるに出版する側、納本する側の記述をみれば、にゃんと10冊も「納本」しているという意識があったことがわかる。
これに関しちゃあ、昨年末にでた我等が金沢文圃閣の『雑誌新聞部数事典』p.438にちびっと志水松太郎がらみで書かれていたことぐらいしか読んだことがないのー。

*1:ぶんげいしじょうがヨミらしいが、なぜだかこのショック号の表紙では「文藝市バ」となっとるね。