書物蔵

古本オモシロガリズム

昭和12年における雑誌の統計上(見かけ上)の増加

同じ記事*1にオモシロ情報がほかにもあって。近年パンフレットの増加が著しいという(これについては十銭パンフレットと東京冊子出版協会についていちど書いた)。
また出版雑誌が激増しているという。その理由2つがオモシロい。
ひとつは「不穏文書取締法の制定を一の契機として」「校友会報、青年団報等にして従来の法の不知に因り届出納本のなかつたもの」が届けられるようになったからというもの。
もうひとつは「各種の文藝賞に刺戟せられて」「文藝同人雑誌の著しく増加した事」であるという。
ちと分析的に書くと。

  1. コワイ法律ができたんで、それをきっかけに届出をしなければと法律を知らん人も思うようになった。
  2. 会報などは従来の出版法で届出義務があったのに、それがなかった。
  3. 芥川賞などを獲ろうと、同人誌が増えた。

この分析をさらに敷衍すると。

  1. 同人誌はほとんど出版法で届けられた。
  2. 会報類の届出がないのを当局は知っていたが、積極的に動こうとはしなかった。

こんなことも推論できる。
さらに出版統計そのものの問題点。

  1. 当局のさじ加減で、数値がかなり大きく変わること

もわかる。

*1:出版警察より見たる出版物の動向:昭和十年」『内務時報』2(3) p.228-235 (1937.3)