書物蔵

古本オモシロガリズム

「商報」という出版物

おおくは「○×屋商報」などのように、タイトルの前半に商号をたてて名付けられるもの。
あるリストを見てたら、そういったモノがあると知り、その週のうちに、ある場所で、「商報」を見るを得たが、特定商店の新商品紹介で、形態的には1枚を2回に折って8p.にしたもの。リーフレットといえる。ストックされた旧商品については、別途出版されたらしい目録を見てくれぐらいのことが書いてあった。
業界紙、業者向け通販カタログの嚆矢ならん。まあ当時の出版検閲用語でいへば「宣伝印刷物」といふことにならうか。(うん、これはいいすぎなやうな。図書課のいふ「宣伝」は、いまの宣伝といふよりも、プロパガンダといはんか「政治的宣伝」意味があるやうな気がしたてきた。2014.7.26削除追記)
いま主要OPACを見ると、すこし残っていることがわかる。
たとえば、webcatにでてくるこれは、肥料会社のモロサダ商店(現・師定株式会社)の商報で、残っていたものが復刻されたらしいとわかる。

  • 取予旬報 / 師定商店. -- 復刻版
  • 取予肥米商報 ; 大正編. -- 復刻. -- 師定, 1988

いま、NDL-OPACプランゲ文庫を見ると、1940s後半(占領期初期)の業界紙化したものがけっこうヒットするから、戦前のものがいかにたくさん出ていたのかしのばれる。ぜんぜん残ってないね。

「内報」も同様

業界紙の起源のひとつ、「内報」もまったく同様に、あるいはそれ以上に残ってないねぇ。かろうじて新聞内報が、『新聞と社会』の復刻という形で出現したといえよう。

けど、『新聞と社会』の連中は、内報ではないと自分たちでは主張していたそうで(佐藤卓己先生の解説による)(σ^〜^)
というのも森さんに何年もまへに聞いたように、内報というのは「総会屋雑誌」的な意味合いが生じていたから。
ん?(・ω・。) 良い子のみなさんは「総会屋」も「総会屋雑誌」も知らんかな?

この(内容の割には高い)雑誌を買ってちょ。

と、企業の総務に頼んで回る押し売り雑誌。で、買わないと、会社のスキャンダルを書かれちゃうというすばらしいビジネスモデル。
森さんに、総会屋雑誌の見分け方を聞いて、目を白黒させたのは去年のことだったかしらん(*゜-゜)
まあとにかく、大正から昭和前期にかけ各ジャンルで「内報」が成立し、ジャンルごとに「新聞内報」とか「出版内報」とか言われた。
けど佐藤先生が書き、森さんも別途指摘していたように、同時代でさへ内報について書いたものは極く極く少ない。

参考「社内報」

戦後は社内報といったけど、もとは「社内雑誌」と呼ばれていたらしい。いちど『プレスアルト』の記事を紹介した。

社内報の納本について
http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20080522/p1

上記にも引いたけど、「会社、工場に社内雑誌の現れたのは最近のことで労働運動の終焉前後に発生したものが殆んどで、アジテーションプロパガンダの武器として持つて居た労働新聞に対抗して出来たものと見る事が出来る」(平賀末雄「社内雑誌論」『プレスアルト』(51)p.1-6(1942.1))とか。
ただ、戦後、これが「社内報」と呼ばれるやうになって、「内報」という語が「業界紙(誌)」などにとって代わられたやうに思はれる。
ちなみに残存状況を調べると。
マツダ共励」東京芝浦電気マツダ
神奈川県立図書館に2号分のみ
「歩一会々誌」松下電器産業
つぎのネット記事をみると、どうやら松下に現存するらしい。http://research.php.co.jp/kenkyu/report/pdf/shinhakken/2.pdf
「親友」住友金属工業
LCにごく一部ある。住友金属工業株式會社伸銅所親友會が出版社。
「明報」明電舎
みあたらず。