書物蔵

古本オモシロガリズム

平安時代にブックモビル?:Kleine Bücherwagensgeschichte in Japan

本に車輪がつくというのは、なぜだか読書人のココロを愉します

デイリー・スムースさんとこで、古本屋台(ふるほん・やたい)や、古本車(ふるほん・シャ?、ふるほん・ぐるま?)、自動車文庫(ブック・モビル)のことが話題になっていた。→
古本車 http://sumus.exblog.jp/11753282/
自動車文庫 http://sumus.exblog.jp/11596302/
わちきの日本最初の配本車のエントリを参照してくれているやう… うれしいなりっ!o(^-^)o
んで、わちきも、移動図書館車、配本車を超えて、本を運ぶクルマの歴史をチト調べてみた(日本限定)。
ドイツ語では、本を載せたクルマをbucherwagenと造語するらしいから、そのまんま、文・車で、「文車」と漢語的な熟語ができる。
ん?(・ω・。) ブンシャ? 
さにあらず、さにあらず(・∀・)ノシ

文車(ふぐるま;fuguruma)について

文(ぶん)と車(しゃ)で、「ふぐるま」と訓ませるのぢゃ!`・ω・´)o これは漢語ではないらしい(諸橋にみあたらず)。和語へ漢字を当てたものか?
文書(documents)や書籍(books)を運ぶのに使ったクルマぢゃ(*´д`)ノ
日国や『国史大辞典』『平安時代史事典』をみると、「ふぐるま」には2種類あったとのこと。
室内用の厨子や書棚に小さな車輪を4つつけたもの。
野外用の牛車に板張りの屋形をつけたもの。こちらは野外運搬用で、主として火災時に文献を避難させるものであったらしい。
平安時代からあって、「なよ竹物語」には、野外用の文車の絵がある。まぁ牛車(ぎっしゃ)に屋形がついたものと思ってくれればいい。内装については記述は見つからん。おそらく、書架のようなものがしつらえてあったのだろうけれど。

日本主義図書館学?

わちきが明治末の図書館員ならこう言ったろう。

ブック・モビルの起源が19世紀米国だ、などと威張るでない。
本朝には今を去ること1千年前、ふるぐるま、があったのぢゃ。
これぞ人類はじめてのブック・モビルなりっo(`・ω・´)o
日本は世界中のブックモビル濫觴の地なり〜

これこそ、日本主義図書館学なり、ってか(^-^;)
あの兼好法師が『徒然草』72段で「多くて見苦しからぬは、文車の文、塵塚の塵」と言及したんで後世の学者達も、ふぐるま、ってなーにと思っていたみたい。
とゆーことは『古事類苑』ですぐわかるね(o^ー')b
ちなみにこのふぐるま、英語では「special wheeled chests」とKornickiさんの本*1にある。うーん、でもコーニツキさんのここの記述は、防災用野外型と、室内型を混同してしまっているような(゜〜゜ )
いま、Bücherwagenをググると、あのシーおばさん人形付属、ブックトラックがでてくるから、
http://hobohm.edublogs.org/2007/09/02/librarian-action-eine-utopie/
ふぐるまの現代語訳は、ブック・トラックってか(゚∀゚ )アヒャ

文車(もんのくるま;mon-no-kuruma)

ちなみに全く同じ表記「文車」で、もんぐるま、もんのくるま、もんシャ、と訓ませて全く違う用途の車両のことを指すこともあるので注意。ボディー(筐体)を文様で飾った殿上人用の乗り物のことという。

*1:The book in Japan : a cultural history from the beginning to the nineteenth century / by Peter Kornicki.. -- Brill, 1997.. -- (Handbuch der Orientalistik. Funfte Abteilung, Japan ; 7. Bd. = Handbook of oriental studies.)