書物蔵

古本オモシロガリズム

初出索引から作家の運命を考える(応用ビブリオメトリクス)附.日本列挙書誌学の48年体制

(2006.10.1に書いた記事。10.5に移設予定)
去年こんな、枕のような大きさの本が出た(47000円。もちろん買わず)。
文芸雑誌小説初出総覧: 1945-1980 / 勝又浩[他]. -- 日外アソシエーツ, 2005.7
文芸誌・総合誌に載った小説を著者から引けるスグレモノ。(一般性の低い雑誌(短歌・俳句誌、ミステリ・SF誌、アダルト誌など)は除外。ただし文芸誌等にあればSFでも採録。)日外のツールは、ともすると大味なツクリ本があるんだけど*1、個人編者がついとるもんはよいもんが多い。
それはともかく、この長い長い序文を読んでいたら、いろいろ面白いことが書いてあった。

日本列挙書誌学の1948年体制

戦争直後は、戦時中の反動で『りべらる』に武者小路実篤が載っていたりという「そんな混沌とした時代だった」わけだけど。

ところがこのあたり、1945年から48年8月までの間は、国立国会図書舘の「雑誌記事索引」もまだつくられておらず、欠落のままである。年表や年譜の作成者には最も厄介な部分、暗闇の多いところである。むろん、一部の人たち、福島鋳郎、木本至、保昌正夫紅野敏郎といった人たちの発掘調査がないわけではないが、それらも全てとは行かないし、また、取り上げられたとしても、それぞれスタイルが違っていて、なかなか全体と抑えるということにはならないのが実状である。

福島鋳郎さんはこの前でてきたよね。
日本では歴史的なもんを、政治・経済・社会・文化すべてにおいて1945(昭和20)年のマエとアトで分けるクセがついちまってるが、実は、

書誌ワールド的には、1948(昭和23)年のマエとアトでわけて考える(作業する)ほうが効率いい

のだ。
今の法定(義務)納本機関(かつ大規模な書誌DB作成機関)ができるマエとアト、というように。

日本列挙書誌学の1948年体制ってか(゚∀゚ )アヒャ

書誌世界で昭和23年以降のことを追っかけるんであれば、まずは国会を起点に考える(作業する)ことになる。
もちろん、昭和20年以前も、こりゃまた帝国図書館になるんだけれども。
それでも昭和20年と昭和23年との間にスキマができちまってることは、戦前と戦後を地続きで考えたい人たちにとっては悩みのタネなのだわさ。
で、このまくらのような(厚さの)初出索引。1945年から採録年代が始まってるのが味噌だねえ。

*1:こんなことレファレンス・クラブでは書けまい(・∀・)。