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古本オモシロガリズム

「新雑誌X」は大宅文庫にありやなしや?:戦前総会屋史文献探索の事例から古本者の存在意義について考察する

ヌートリアさんからの通報で、あんなに探し回って出てこなかった総会屋の歴史についての記事が「新雑誌X」(の別冊)にあるという。
まづもって、びっくりし、「(|| ゚Д゚)ガーン!」
「あんなに合理的な検索をしたのになぁ(=゚ω゚=)」とか思ふたことですよ。

参照作業(reference work)に於ける「合理的」とは

ギョーカイの一部に「合理的な検索手段」という言い回しがあって(いちど書いたかな)
これはレファレンスの教科書に出てこないが実務上ヒジョーに重要な概念で、いろいろ定番のツールをつかって、みつからなかった際の言いわけ用語なのである。
逆に言うと、そうでない検索手段(まあ術語として精確には探索手段)があるのだわさ。
合理的な検索手段ちゅーのはいいかえると、演繹的ともいいかえられよう。
探索事項をファセット分類的に分解し、各ファセットごとに探索ツールを考えていく。
たとえば。

総会屋の歴史についての記述、とくに戦前について、図書でも雑誌記事でも見つけたい

となれば、
総会屋ー日本ー歴史ー近代ー図書(or雑誌記事)
といったふーに分解したあとで*1

総会屋<職業<労働→労働問題の主題書誌
総会屋<反社会的集団<警察の取り締まり対象→警察白書→戦前版?
総会屋<株主総会<株式会社<産業→産業史の主題書誌
総会屋<人物→列伝or伝記
日本→日本学の主題書誌
歴史>歴史学歴史学の主題書誌
近代>明治、大正、昭和前期→明治文化全集、事物起源
図書をさがす→OPAC
図書をさがす→古書販売サイト
雑誌記事をさがす→雑誌記事索引

(凡例もどき)

<:上位へ >:下位or関連へ →:ツールへ

などというようにふくらませていく。いきなり総会屋だけでふくらませてもダメ*2
ってか、これらのことは、なれた人なら瞬間的に行われる。って、上記演習的メモをみると、おおむね上位概念へふくらませていって(例外は歴史学?)、それらに対応する既存ツールのありなしを検討するということになる。もちろん、職業や反社会的集団からは警察や労働ではなく、(日本)民俗学といったジャンルへ跳んでいくことも考えられねばならん。
で、このように演繹してさがしたツールで見つからないとき、「合理的な検索をした」とか「これ以上は合理的には見つからん」といって、なげちゃうとゆーことを、実際の探索者はやっているわけだ。

「合理的」でなく見つかる事例から

ところがぎっちょんここにヌートリアさんが現れて、「別冊新雑誌X」にありますよ、と教えてくれた。これは合理的検索のそとの話で、ほんとうの専門家(あるいは物知り)に聞いちゃう、というレフェラル・サービスみたいなものなわけである。
まあ、レフェラル・サービスは専門家へ照会・紹介ということになっとるが、これはつねづね言っとることなのだが、専門家がいないジャンルというのも、あるからねぇ。実際、いま滅びんとする職業、総会屋についての、それも歴史の専門家なんて、おらんしね。
じつは、主要な雑誌記事索引3、4種のなかに大宅文庫のものがあって、そこでひっかかるべきものだったんだけれども、でてこんかった。とゆーのも、webOYAで採録紙を確認すると、「新雑誌X」が採録対象でなかったことが判明した。
そういう意味では、いまだ合理的探索手段というのは拡張できる余地があることはあるが(たとえば、NDLがやっとる近デジに付随する目次DBなどに新雑誌Xはー将来ー入ってくるだろう)、一方でいつまでたっても、合理的・演繹的にはわからないが、経験的・帰納的にはわかってしまうという現象もありつづける。

「非合理」へのめくばりが、本来は必要

そんな、経験的・帰納的な探索ツールというのもを記述することは、じつは合理的な検索ツールを拡張することにもつながるだろうし、それに、実際にわからんものがわかる、という具体的(よい)結果をだすことにもつながる。
問題は、これは社会科学、自然科学系のレファレンサーにありがちな、合理的検索だけをしておわり、という知的に怠惰な態度だといえよう。それをやっていると、すぐ回答はでる*3が、長期的には縮小再生産におちいってしまうし、なによりツマラナクなってしまう。サーチャーはどこまでいってもリ・サーチャー的にならんということかしら。
たとえば実際、今回、総会屋の戦前史の専門家なんて、この世にひとりもおらんのに、ひとり、ちゃんと経験的な答えをよせてくれた人がいるでしょ(σ^〜^)σ

古本者の行動分析が必要?(σ^〜^)σ

それを単に、ヌートリアさんという固有名で終わらせずに、ヌートリアさんを一般化すれば、そういった戦前の雑学についての知識がどこらへんに貯まるものなのか、ということが記述できるでしょ。
まあここではわかりやすく「古本者」とだけ記述しておきますがの(^―^)うんうん
もし、レファレンサーサーチャーでないのならば、サーチャーとリサーチャーの間(正確には論文・報告をかかないリサーチャー)にならねばならんなぁ(*゜-゜)
その際には古本者が役割モデルになりそうな気も(σ^〜^)
我田引水かしら(^-^;)

(追記)結局、オーヤに新雑誌X」はあるのー?

……σ(・ω・。)わちきのこと呼んだ? さうぢゃった、題材にした疑問へのこたへはといへば。。。
web-oyaでわかるのは採録誌だけ。
現状では、さういった疑問にこたへるにハ、かういった本をみるしかないのぢゃが。。。

残念、「新雑誌X」はこれが出たあとの雑誌だからねぇ。。。
ん?(・ω・。) デハ、「新雑誌X」とは何かってか?(^-^;)
ここにたまたまそのコピーがあるが

元「現代の眼」編集長・丸山実が編集
過激満載・話題満載の情報総合誌
新雑誌X

ってあるねぇ(σ^〜^)σ

新雑誌X<シン ザッシ X>. -- (AA12171709)
1巻1号 (昭58.8)-9巻7号 (1991.7). -- 東京 : 幸洋出版, 1983.8-1991.7
  注記: 1巻1号 (昭58.8)には「創刊準備号」の表示あり ; 発行者変更: 幸洋
  出版 (1巻1号 (昭58.8)-)→新雑誌エックス (<9巻7号 (1991.7)>) ; 9巻7号
   (1991.7)は通巻89号の表示もあり
  別タイトル: 新雑誌X
  継続後誌: 新雑誌21
  著者標目: 新雑誌エックス<シン ザッシ エックス>
所蔵図書館 2
  東北公益大 メディア 3(10-12),4,5(1-2,4-7),6(2)<1985-1988>
  日本近代文学館 3(2,5),8(3)<1985-1990> 

*1:これは、ファセット分類でもあるが、細目つき件名標目でもあるし、標準列挙順序でもあり、具体性減少の法則順でもある。しかし、かように参照作業の論理化と件名標目は連動しとるのに、なしてレファレンサーは件名を使わんのかね(=゚ω゚=) ってか、件名使わんからレファもだめだめなんだよなー(σ^〜^)σ でも誰もそれを指摘しなーい(*´д`)ノ 

*2:ってか、NDLのリサーチナビについてた連想語システムのいけないところは、いきなり連想しちゃうところで、ファセットにわけたあとで連想してたら結構つかえるものになっていたのではないかと思う。もったいな。

*3:とくに、ない場合に、ないと、すぐわかる。もちろんそれは、枠を区切っておるから、ということにすぎんがね(* ^ー゚)ノ