書物蔵

古本オモシロガリズム

足立勤 (1898-1945) ‖アダチ,ツトムについて(メモ)

翼賛会が出した、『文化健民運動資料 第4輯』大政翼賛会文化厚生部 昭和19年 が読書運動の特集号なんだけど*1ここに寄稿している5人のうち3人はよく知ってるんだが、あとの2人がわからない。
で、しらべてみた(原太一は未調査)。
足立勤は、やはり爆死した児童文化運動家である可能性が高まってきた。
足立勤児童文化論集 / 畠山兆子. -- 関西児童文化史研究会, 1989.10. -- (関西児童文化史叢書 ; 3) 
この本が手がかりね。これは足立の著作集。これに評伝がついてた。NHKに勤務(大15.4.15〜昭18.8.25)して子供番組(とーぜんラジオだよ)をつくってた人。大阪中央局子供係。「大阪童話教育研究会」って団体もやってたらしい。
著作集に収録されたもの(初出:『小国民文化』(昭19.8)p.24-26)に、「大阪こども文化の会」に外郭団体をつくって、そこで児童劇とか紙芝居とかを工場などで指導させたい、と言っているなかで、「読書指導」が一言だけでてくる。翼賛会への寄稿は、この関係と考えてよいかも。
浜松に帰省中、「ご自慢の防空壕」に直撃をうけて家族とともに爆死(昭20.4.30)(ノ_・。)

追記

目次みると「大阪こども文化の会主事」とあるから(本文末尾にもあり),ご本人に間違いない。この『資料』はどうやら昭和19年の4月ごろに印刷されたらしいから,上記『小国民文化』よりも前に発表されたもの。

 特に,大阪地方に於ける産業少年戦士のための図書選定が(略)
 大阪こども文化の会では,優良図書推薦委員会及び選定幹事会を設けて,優秀図書の推薦及選定を行ふことになった。
 優良図書の推薦委員会の構成は左の通である。
推薦委員
 本会副会長(大阪府女子専門学校長)  平林治徳
 同科学専門委員長(大阪商船専務取締役)和辻春樹
 同 芸能専門委員長(神戸商業大学教授)平井泰太郎
 同 科学専門委員(川西航空取締役)  橋口義男
 同 芸能専門委員(作家)       佐藤紅緑
 同 芸能専門委員(作家)       川田順
         (大阪商科大学々長) 本庄栄次郎
 同科学専門委員(大阪帝大理学部教授) 浅田常三郎
        (大阪市教育局長)   市川寛

で。

只今の所その組織ができたばかりで,その具体的な活動はすべて今後にまたねばならないが

府下の大工場数十箇所を擁する団体から1年間お金をもらい,図書群の選定・配給を請け負ったとある。
わちきが最近,注目しておる工場での読書指導は,大阪ではこんなぐあいにはじまっていたのだった…。

追記2(2006.10.13)

次に異常なほど爆撃をこうむった例を紹介しておこう。/それは静岡県浜松市の例である。(略)
他の都市の二倍程度の密度で爆弾をばらまかれたことになる。(略)
「この浜松ほどあわれな都市はほかにない。われわれのB29は,(日本の攻撃による)被爆やその他の事情で爆弾を投棄する場合,この浜松上空で搭載爆弾を処分するよう命ぜられていたのだ。
(略)(C・ルメイ「私は成層圏の“かがやける爆撃王”だった」)」
超過達成の理由は,“爆弾捨て場”にあったというのである。(略)笑うに笑えない実話でないか。
吉田守男『日本の古都はなぜ空襲を免れたか』(朝日文庫)(p.146-149)

日本本土への爆撃についていえば,初期の精密爆撃から焼夷弾爆撃へ転換した時点で,交戦法規違反であり,したがってその首謀者ルメイはBC級の戦争犯罪人極東軍事裁判の被告になるべき人じゃ。
もちろん,いまとちがって「精密爆撃」はぜんぜん目標(軍事工場とか)にあたらないんだけどね。

*1:第4輯 国民読書の狙ひどころ(中田邦造) 国民読書運動の非常措置(堀内庸村) 青年の読書会について(東田平治) 読書会二年(原太一) 図書選定運動について(足立勤)。