書物蔵

古本オモシロガリズム

古書通ならぬ古本通

古本ブログで激賞されてる『古本通』(平凡社新書)ですが…
わちきも推すなり(^-^*)
全体的によい教科書になってる,ってことはみんな言っているので,ここではわちきが気が付いたよさをいくつか。
交換会の写真がある。
これは意外とないからねぇ。わちきも行ったことないし。坪内祐三さんがどこぞの店員になりすまして入ったことがあるらしいが,部外者立ち入り禁止だし。
神田の古書展で,呼び出し放送が入った瞬間に,背景音として,「○○堂さん何円〜」って読み上げる声が聞こえるくらいだよ。

古本学校としての交換会

養成機関としての交換会」,ってとこで,たくさんの本を仕分ける(何冊かで1本の束にする)ところで,関連書をまとめるところがでてくる。ようするに,類書(主題的に関連する本)は一本にまとめる方が値段が上がるというわけ。
もちろん,なにが関連するかは,主題知識がなけりゃあできっこない。だから,それをやりながら経営員(しばる人)は主題知識をみにつけていくわけだけど,ほんとうに専門的な本の場合には,経営員だけじゃなく,ほんとうの専門書店の店主がひっぱり出されてくる,とある。いざとなりゃあ,ほんもののsubject bibliographerが出てくるというわけだね。そういった場(経営員)に,古書店の二代目三代目が修行に来て,主題知識と相場観を身につけるというわけだねぇ。
もちろん,そんなところに修行に出してもらえる人は,新規参入者に比べればシアワセなわけなんだけど(わちきも,修行したいo(^-^)o ),古書業界は,「資料を知る」ためのシステマチックな制度(慣例)を持っている,というわけなのだなぁ。
*1

相場と,落札額のズレ

入札額の判断」ってとこは,相場の話と,実際に落札できる価格のズレが言及されてるのがおもしろし。わちきも,シロウトながらヤフオクなんかもやるけれど,ほんたうに欲しい(図書館史)ものは,強気の値を最初っからつけるようになったす。それでダメなら気持ちよくあきらめられるからね。「やらずの札」なんてゆーオモシロイ専門用語の説明もある。

書誌に強いは…

あと,友人Aから言われて,たしかに「めずらかなり」と思ったのは,書誌(ないしOPAC)の効用について1章をあてられていること。

古本本で書誌にしっかり言及してるもんはめずらしい

といへる(って友人Aの話そのまんま,はずかし(≧∇≦)!)
そうそう,古本本の解題書誌*2ていえば,書物の達人 / 池谷伊佐夫. -- 東京書籍, 2000.9 だからね。『古本通』が古本道の教科書ならば,『書物の達人』は古本本のfurther readingsなのじゃ。
それはそうと…
書誌類の充実している蒐書は,本体の蒐書も充実していると『古本通』にあるが,これって,まんま畏友ピラ友たんにあてはまる。ピラ友たん,ズショクワンの小ねたも(なにげに)すごいけど(後述),本体のトンデモねたもすごい。きっと「なぜだか書誌を集めてた」というのが(無意識的にせよ)効いてるんだねぇ。
ほかにもいろいろほめたいところはあるけど,最後にひとつだけ。

軽井沢の不思議な古書店が明らかに

わちき一時期,軽井沢の万平ホテルにぶらりと行ってメシを喰うのが趣味だったんだけど,その時,「なんとも不思議な」と思った古本屋があった。その古本屋についての記述があるのがビックリ。

私が古本探索そのものを楽しむに理想的な店だなと思うのは,軽井沢の豊島書房さんの店である。夏の間だけ,軽井沢銀座の奥まった通りに開店する古本屋である。豊島書房さんは以前東京赤羽で店を持ち,出版も手がけられていたが,現在は茨城県つくば学園に移転,ブックセンターキャンパスを開いている。(中略)軽井沢の店は実は屋号は掲げていないし,古本には値段が書かれていない(後略)

そうそう(≧∇≦)ノ 「軽井沢銀座の奥まった」場所だったよ(世紀の恋愛のテニスコート近く)。うん,たしかに屋号がなくてとまどった憶えが。シーズンオフにいったら閉店してて,妙によい品揃えだったのに不思議な… 白昼夢かしら,と思ったものだった。永年の疑問が解けたなり〜(^-^*)
あ,もちろん,知る人ゾ知る有名な「りんどう」さんとは違うとこですからね。念のため。

*1:ひるがえって,図書館業界はどうか? Libary schoolじゃあ,抽象的な話に終始し,現場でも本そのものよりバーコードばかりに目がいって,ぜんぜん資料を知る機会がないわなぁ。古書会館の経営員みたいに,(失敗したら)ゼニ・カネの形で明確に負い目を負うわけじゃなし,身に付かんわいね。話ゃとぶけど,ある軍事施設のレファをうけて公刊戦史も見んと「ネットにこうありました!」などと答える担当もいるくらい。バカまるだし(って,バカまるだしはバカ者,じゃなかたワカ者の通弊であるのはいいとして,それを矯正するようなシステムがない,というのがほんとうは困るのだ。レファ共同DBに,そういった機能があるか? ないでしょう。おそらく経営員はそういった知識を,しかられながら身につけるにちがいない。)。これじゃあまるごと外注化されても文句いえないわい。

*2:annoted bibliography の日本語訳。解説つき文献リスト