書物蔵

古本オモシロガリズム

わちきの収集領域(再論)

昨日のエントリにはじめての方から古本情報をいただく。ありがたいのー
そういえばしばらく前,通りすがりさんからも探求書情報をいただいたなぁ。その時は残念ながら品切れだったけど。
探求書をブログに出しておくとよいのかも知れない。
ただ,「探してると古書価が上がる」震源地になってしまうのは困る(って都合よすぎ?)。
もちろん,ニーズがあるのに本がない→値段があがる,ってのはしょうがない部分もある(てか資本主義的に正しい)。うーむ。
わちきの収集領域は,いちど聞かれてこまったが,とりあえず「読書論」とでも答えておこうと思いついた次第。でも,正確には,読書史,読書施設史かなぁ。ほんとうは,

戦前〜昭和30年代の図書館関係書(わちき語では「図書館本」)。

この図書館本って,実は集めてる人は少ないのだ。理由は,1)人気がぜんぜんない 2)一部の専門家も図書館蔵書を使えば済む 3)もとから出版部数が少ない 4)古書市場でもツブシになって市場に残らなかった
1)人気
これは満鉄図書館を除く。満洲もの,満鉄ものは,残留左翼が植民地研究にながれこんで人気。まぁ本日の朝日新聞(満鉄100周年の記事)によれば,「視点が多様化した」ともいえるが。ただ残留左翼系だと,事実関係を途中でほっぽり出しちゃって,結論部分でいきなり

「戦争責任」とか「(帝国主義の)負の遺産」とか

わかりやすい紋切り型をだしてきちゃうから困る。
現在の会社や官庁は(個人の多数派も)みんな現行の日本国憲法下で活動しておるが,50年後,価値観や体制変換が行われた暁に,どの会社も官庁も個人も一律に,

戦後責任」とか「(民主主義の)負の遺産」とか

で断罪されたら立つ瀬なかろ。
あーしてこーしてそうなったけど,戦争責任からは逃れられん。って紋切り型をやるんなら,いまの我々が,普通に暮らしていても後世の人間に,「けど堕落した民主主義体制の中でしか考えてない」っていわれても文句いえん,ってこと。
おなじ体制下でも,時流にのって悪いこと・ずるいことしたのか(「時局便乗」という),それとも,それなりによいことをしたのか,と細かく見ていくのが歴史学じゃないか。
歴史学ってのは一律の紋切り型を防ぐ思想の安全装置ととらえたいもの。
2)専門家
司書課程の省令科目に「図書及び図書館史」という不思議な科目がある。まあ選択科目なのでどの司書課程でも必ず設置されているわけじゃないけど,これがあるおかげで図書館史の専門家というのも,この日本にちょっぴり生息できるわけ(ってわちきは違うよ)。もちろん日本史系の人はほとんどいなくて,多くは現場あがりだから,学問としてはアマイものになってしまうけど,しょうがない。
でも,これらの専門家は,いちおー「図書館学」につらなるだけあって,図書館の蔵書を使おうとするし,実際に使えるスキルも(他学問の専門家にくらべりゃぁ)ある。だから集めるなんてことはしない。(これは,わちきには,ありがたい!)
3)出版部数
いまでも図書館本の部数は,ふつう2千部いかんのじゃないか。手許のNDC6−A版に各版の出版部数の一覧があるけど,戦前は数百部だよ。この世でイチバン売れる図書館本なのに。
ま,このふつうってのは,協会本の実務関係書ぐらいに思ってくれればいいけど。
一時期,図書館本は図書館が蔵書として買うように,ぐらいのことが奨励されていた。たしか『中小レポート』にもそんな記述があったよ。これは裏返せば,

図書館員は業務参考書を自腹で買わなくてよろしい

という,専門職にあるまじきことを奨励していたんで,わちきはずいぶんとヘンテコな「専門職」だなーと。かなり前,某古書店さんに図書館本を買いにいって,「図書館本をそろえた甲斐があった」(要旨)なんていわれてはずかしかった。わちきぐらいですよ買いにくるの。だって図書館界はあげて図書館本を個人では買わないように指導してるも同然だから。
むしろ,すこしでも客向けのビジネス書でも文学書でも買って,業務に最低限必要な本は事務用品費で,

スキルアップのための本は図書館に買わせない(で個人で買え)ぐらいの運動

でもすべきなのだよ。それが論理的にはただしいし,協会だってカネが入るでしょ。
いったい協会は,労働運動をしてるんだか専門職運動をしてるんだかワケワカラン。
4)古書市場でツブシ
うん,ツブシ(古本業界で「廃棄する」こと)。これも,しょうがないね。
実務書は,古本業界としては,どんどこどんどこつぶすしかない。で,実は,つぶされきった後にはそこそこの価値がでてくるんだけど,それもいきおいあまってツブされちゃう。ネット古書展「絶望書店」さんが指摘していたツブシの悪い側面だね。
しばらく前買った物品管理法の注釈書,ほんと,10年近く探してはじめて見つけたからなー。これはその良い例だよ。ところでwikipediaの物品管理法の項目,なぜ財務省でなく国会図書舘の職員が書いているのだろー? そんなことするヒマがあるんなら,組織法たる国会図書舘法の項目でも書けばいいのに。財政法まで書いちゃってるし。ワケワカラン。そんなに財政法規が国会図書舘で尊いのか? だとしたらまさしく,あそこには図書館官僚はをらぬということになるのう。をるのは庶務会計のstreet levelの官僚ばかりということになるぞよ (・∀・)  これを称して法匪という。