書物蔵

古本オモシロガリズム

立憲民政党「政務調査館」

戦前の政党には附属図書館があったのだ。その目録が,これ!(って一度,友人が高円寺で掘り出した時,紹介してるけど)
立憲民政党政務調査館図書件名目録. 第1輯(自昭和9年3月至昭和11年9月) / 立憲民政党政務調査館. -- 立憲民政党政務調査館, 昭12 函コワレ カバ 3000円
これはただの目録でない。 3つの意味で特別な目録なのだ!

  1. 日本最初の政党附属図書館の史料として レファレンス史的意義
  2. 日本で発達しなかった件名目録の例として,目録学史的な意義
  3. なんどか言及した廿日出逸暁のお仕事の成果として,図書館史的な意義

1についちゃあ,いま国会に附属図書館があって(国会図書舘という),議員個人や院内会派はそこにレファレンスを頼むけど,政党単位で自前の図書館を持つっていう選択肢も歴史的にはあったのだ。資料にもとづいた客観的な政策立案… むかしから夢が語られていたんだね(・∀・)
序文をみると…
すごい! 日本で最初(で最後)の政党附属図書館!
序文と奥付から名簿風に立憲民政党政務調査館のデータを採録すれば…

所在地 東京市芝区新桜田町二十七番地
建物  鉄筋コンクリート構造 地下1F地上3F(のち書庫4Fを昭和11年に増築)
部屋数 計10室(含.書庫,研究室数室)
竣工  昭和9(1934)年3月16日
組織  図書局 政務調査局
図書  約2万冊(江木翼寄贈の江木文庫ほか,原修二郎,川崎卓吉,松田源治らの寄贈寄付による)
雑誌  4百数十種以上(大部分寄贈) 

ということ。

本館の基礎は初代館長,田昌氏の献身的な努力と,現千葉県図書館長,廿日出逸暁氏の熱心なる指導とに依つて据ゑられたものであつて,政党附属の図書館として我が国における最初のこの施設は全く新らしき企画と組織とを以てなされたのであった。

廿日出さんは戦後,千葉県立での巡回文庫(ブックモビル;図書館バス)で全国に有名になったけど,そのまえには整理技術の実務もしていたんですねぇ。

即ち本館の図書整理方法は従来我が国の図書館に於て踏襲せられつヽある方式を避け,書庫を極めて経済化し,書庫に於て分類排列するを止め,書籍は受付順に逐次書庫に陳列し,ヘボン式ローマ字順による,件名カードを以てのみ分類するという,我が国図書館界最初の試みを採用したのである。

当時の日本では閉架式(書庫出納方式)が主流であったんだけど,実は,書庫ン中で分類排架していたことが(各館独自のかなり粗い分類だったけど)多かったのだ。
利用者が直接書庫に入れないのに何で分類排架してたのか,ってのは疑問。たしか,本が利用中の場合,出納員が代わりの本を出しやすいなどという,いささかふざけた理由がどっかに書かれていた気がする。ほんとうは(大学などでは)一部,特権利用者(教員・院生)の入庫のためだったにちがいないとわちきはにらんどるけど。(この一部特権利用者の入庫(安全開架としての書庫)については,あまり実態がわからんのだ。が,そのうち書くつもり。)
閉架式ならば,論理としては,完全な受け入れ順排架で目録を整備するというのが美しいわけで。それを廿日出さんは実験したというわけだすのう。ある意味えらいし,目録史的意義ありまくり。この目録に出会うまで,わからんかったよ。図書館史には,個別サービスの歴史記述がすくなすぎるし。
でも,まあ,インターネット時代まで,この論理の実用性は,あんまりなかったわけだけどね。
ここの設置目的たる政務調査としての成果はどうだったのかといえば,おそらく政党そのものが解散してしまったから(1940年に大政翼賛会に)ちょっとわからんねー
蔵書のほとんどが寄贈というのが,あやうさを感じさせるし,専任の職員がいるかどうかってのも(目録の序文からは,わからない)問題だねぇ。
('0'*)あっ! いまググッたら,国会図書舘の蔵書印譜に,この調査館が載ってるらし。意外なり〜
蔵書印譜って,ただのフェティシズムかと思ったら,所蔵者・館の簡単な説明集としても使えそうなりね。これは要チェックなり〜
この本だけで,1月は大漁ということになるなり(^-^*)