書物蔵

古本オモシロガリズム

地図ブーム

大阪の天満宮で買った『地図つれづれ草』(みすず)をパラパラと。
60年代の地図についての論説がわかる本。ただし出たのは1975年で空前の地形図,古地図ブームだったらしい(一度書いたね)。

近年[1975年当時],地図の売行きはますます伸びつづけており,古地図愛好の機運もまた異常に高まっているという。これは,高度成長政策で促進された開発・観光ブーム,あるはまた歴史への関心の高まりとも無関係ではあるまい。

と,本のカバー裏表紙側にある。これを書いているのは著者ではなく,おそらく出版社の編集者。文中の「歴史への関心」ってのは明治百年ブームをうけてのもとみた。
ブームというのは,軽佻浮薄でくだらないもの,というのが通俗知識人の理解ではあるだろうけど,わちきにいわせれば,あらたな知識分野の成立のきっかけとして決してあなどれないのだ。

趣味人・好事家の出現→蒐集の形成→メタ知識の体系化→知識分野の成立

ブームというのは,上記の「発展段階」を促進するから。