書物蔵

古本オモシロガリズム

 博物館本

博物館の風景 / 倉田公裕. -- 六興出版, 1988.12  997円
これは,常々,議論の構造が(抽象レベルでは)図書館本に似てくる博物館本。エッセイですね。主題のあるエッセイ。むかしの件名なら,「博物館--論説」といったところかしらん。
わては学芸員資格とったことないから(取ろうとしたけど,まったく就職できないといわれ,やめちった),博物館界のことを知らんので,こういったエッセイ調の本はありがたし。教科書的記述からはわからない論点がわかるから(書き手の賛否にかかわらず)。さらに,たとえば「博物館界」って言い方なんかもあることを知る。
博物館法の「専門的職員」の「的」ってのが博物館学では問題になってるらしい。だから学芸員資格もってる友人が,図書館法の「専門の職員」っていう表現(「的」がない)を話題にしてたのか。なーる。それで何年もまえの疑問がとけますた。
バブル最中の出版なんで,ちょっと今とはズレてるとこもある感じだけど,十分ヒントに。
学芸員新保守主義」なんてのがヨイ(べつに政治の新保守主義じゃないよ)。

(ある会議で)試行的な活動を提案した。「反対です」と頭から強く否定された。〜よく聞いてみると,どうもその原因は彼女が習った博物館学にありそうである。〜そうした学芸員が育った理由の大半は,〜教えられた先生の保守的な体質を受け継いだからともいえるのであろう(p.154-

まぁ,むやみに進歩的なのも,それはそれで問題です(笑)。ちょっとパロると

ある会合で試行的な活動を提案した。「反対です」とのっけから強くキョヒられた。よく聞いてみると,どうもその理由はその人の習った図書館学にありそう…。そうした図書館員が育ったおもな原因は,教わった先生の進歩的思想を受けついだからであろう。

よーするに「教条主義はイクナイ!」ということ(笑)。
あらためて,(業界の多様性やココロの柔軟性を保障するために)library humor とか図書館評論とかが処方箋になるんじゃないかと思う。
Feministなら,批判の対象が「彼女」と言われているのにキーッとなるのかもしんないけど,そんな野暮はいわないでね。良いことも悪いことも男ができることは女もできるのだよ。おとこがすなるわろきことも,おんなもしてみんとてする,ことができるわけなんで。