書物蔵

古本オモシロガリズム

図書館員作家・渋川ギョウ

JLAの分類委員をやってたアトーダ氏とか、図書館員としてたつきをたてつつ、作家活動をする人々がいる。
いや、わちきは文学よまんのだけどね。実際、アトーダ氏の本は一冊も読んだことはない。でも、現役だったころを回想するエッセイは読んだことがあって、わちきの趣味たる図書館史ほじくり返しの役に立ったことですよ。
そこで、こんなものをチェックしてみた。
渋川驍と昭和の時代. -- 東京都近代文学博物館, 1995.1
渋川, 驍 (1905-1993) ‖シブカワ,ギョウ は作家。けど最初、東大の図書館で、つぎ国会図書舘で生計をたてた人。展覧会図録というのは図版が多いうえに年譜や解説がしっかりしてることが多いから、資料、レファレンスブックになるのだ。
で、やっぱりオモシロなものが。特に写真。図書館業務の風景が見られてオモシロ。
p.12「東京帝国大学附属図書館時代 昭和11年 昭和5年4月から山田珠樹助教授の紹介で勤める。 昭和21年2月退職」とキャプションにあり、書架と本と、タイプライターが見える。昭和前期の大学図書館執務風景。
p.14「国立国会図書舘職員記章帯用證 昭和24年10月から昭和38年1月まで勤務し、考査奉仕課長、分類課長、主任司書を歴任」とキャプションにある。昭和24年11月2日に発行された図書館員の身分証。めずらしい。
p.15「国立国会図書舘(現迎賓館)の執務室にて」とキャプションにあり。机の上に本。整理部門。
あとコラム記事に図書館ネタ。

寡黙で文学の話題は一切なく、ものいえば科学技術関係に弱い私に図書の扱う主題を諄々と説き、(略)昼は山崎武雄として図書館員に徹し、夜は渋川驍として創作活動に専念する、(略)(宮坂逸郎「国立国会図書舘時代の山崎さん」p.17)

渋川の東大図書館時代については→(http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20060422/p3
兼業作家には整理系がよいということか??? 閲覧系をやってた作家というのを聞いたことがない(渡部昇一先生は大学院生時代のバイト)。加藤テンヨーは、たしか最初のころに「バカ事件」を起こしたときは閲覧だったみたいだけど、あとずっと立法考査系だったかな。
〜〜〜
引用してはイカンと言われとるウィキペディア。それの国会図書舘の項目に「著名な在職者」という項目があって、そこにいろいろヘンテコな人名が並んでるんだけど、なんだか政治経済系を―世間的にはあんま「著名」でない人ばかりなのだが―とり除いてみると、たったの4名になっちった。

倉田卓次  阿刀田高 加藤典洋 原武史

倉田さんとか原先生って、数ヶ月とかほんのちょびっとしか在籍していなかったはず。なんかこれに載っていることがおかしいし… 渋川さんってのは、「著名」じゃないのかしらん(゜〜゜ ) ってまさかね(『講談社日本人名事典』などにあり)。いまリストに載ってる連中のうち、将来人名事典に載るような人ってば、それこそ上記のような極々少数。人文系(除.図書館学)ではほかに、朝倉治彦とかいるのに載ってないし。図書館学系ならもり・きよしとか彌吉光長とか石山洋とか丸山昭二郎とか、当然載ってて然るべき人々が載ってないねぇ(・∀・`;) すくなくとも饅頭本が出そうかどうかで線引きしてほしいもの。単に、大学に出てったとか、単に、このリストを書いた人の知人・友人だからということでリストに載せちゃうというのは… いや、べつに止めはせんけどね。ウィキペディアってそーゆーものだし。でもやっぱ典拠には使いづらいね。