拙ブログを「調べる技術」で検索したら、この前のみちくさ市で関連パンフを配布した件しか出てこなかった。これでは、この本をわちきの「魂の双子」が書いたことなど、拙ブログ読者にはさっぱりわからんだろう。
と、いうことでちょっとここでベストセラー『調べる技術』の書評および紹介記事について書いておく。
いま版元のHP、『調べる技術』のエントリを見ると、
《この本が紹介されました》
・週刊新潮 2022年12月29日号
・東京新聞 2023年1月21日
・讀賣新聞 2023年1月29日
・朝日新聞 2023年2月18日
・週刊文春 2023年2月23日号
・週刊プレイボーイ 2023年2月27日号
・日本経済新聞 2023年3月4日
・工場管理 2023年4月号
・聖教新聞 2023年3月14日
・産経新聞 2023年4月1日
・週刊東洋経済 2023年4月15日号
・日刊ゲンダイ 2023年5月11日
・佛教タイムス 2023年5月25日
・測量 2023年6月号
・学校図書館速報版 2023年6月1日号
・讀賣新聞 2023年6月5日夕刊
以上、16件の書評ないし紹介があったことがわかる。週刊誌が東洋経済を含めれば4件あるのが面白い。大手新聞では日経を始めほぼ全部で6件。毎日がないのは、調べることに毎日が疎いからなのか。産経もあるのに。創価学会の聖教新聞がにあるのに共産党の赤旗はないのね。変わったところでは佛教タイムス。
でも図書館系が主題からすると異常に少ないのは困ったもの。この本はもともと在野研究者のために書かれ、なおかつ本としてベストセラーになったのも、丸善オアゾ店、ブックファースト新宿店の「ビジネス書」担当が推したからではあるんだが。
現状では図書館界が関連本の受容もできないほどレファレンスへの意識が低い、感度が悪いということになってしまうが。
図書館界はそうだとして、隣接する文書館学界はそうでもないようで―実際、アメリカの国立公文書館にはレファレンス担当がいる―今回、次の書評を見つけて読んだ。
最後にある「所感」が面白い。
いつものことながら書籍紹介には結構難儀している。 特に今回は、書名から調べ物についてのハウツウ本だろうと 高をくっていた。本書は相当にマニアックな本であり、万人に向くとは思えない。しかし、苦労して読むうちに著者のレファレンス・チップスだけでなくその奥義までもが知ることができる。メモ欄やコメント欄がまたよい。中々ー気に著者の域までには達しないだろうがコツコツとチャレンジしたくなってきた。
本書は多くの知的好奇心を持 つ人にとって新たな世界にたどる道筋を紹介してくれている。
たしかに調べのハウツー本なんだけれど、著者のレファレンスについての考えもわかるよ、ということですな。
文書館学界は図書館界の隣接業界なので的確に読めるのだなぁ。
でも、どこまで調べりゃあいいのさ?
ハウツー本だから入門書だと誤解する向きもあるが、この本は中級以上のハウツー本なのだった。
というのも、この前、マガジン航の「調べすぎてはいけない」という題目の取材をされて改めて意識化されたが、どこまで調べれば調べたことになるのか、その限界はどこにあるのか、という問題に関連する。
論理上、本書著者の旧勤務先(NDL)は日本の全部の本があるので、全部探して無ければ無いということになる。その意味で、調べもの探検世界の果てまで一度は行った人が、その行程を示したものなわけである。誰でも行ける道、誰でもつける港湾のことは書いておらず、最初の出発点が探検隊が出発する港だったりする。そういう意味では中級者以上向き。
もちろん旧勤務先の本4600万件全部を通覧することはできないので「合理的な検索手段」がある範囲内で探検した果て、ということになるけれどね。
なぜレファレンス司書がツールがある範囲内でしか調べないかというとだね。
論文を書く場合、中心的主題、図書分類理論でいう「要約的主題」「主たる主題」について調べるのと、「周辺的主題」について調べるのは違うレベルで調べることになる。中心主題については、調べる手段があろうがなかろうが、調べ続けないといけない。というのも、論文はノベリティが無いとそもそも書いてはいけなくて、そのノベリティとは人類が今まで知らなかったことでないといけない。
一方で、それを証するための周辺的主題については「合理的手段」がある範囲内、つまり、ふつーに学界内で知られていることでOK。そんなところでノベリティを追求してたら、いつまでたっても論文は書き終わんない。
一方でレファレンサーは別に論文を書くわけではなく、リファーをすること(レファレンス)について援助をするだけ。リサーチャーじゃあないからねぇ、レファレンサーは。つまり、合理的手段=レファレンス・ツールがある限りでレファレンス司書は限界まで相手をする。けれど、合理的手段がない調べ物、書庫で4600万冊を通覧しないと答えが出ない主題についてはレファ司書は相手をしない。というのもそれは論文作成者、リサーチャー自身がやるべきことだから。