書物蔵

古本オモシロガリズム

クニゾーたんの出版論および部数論

  • 中田邦造「出版文化と圖書館事業」『文献報国』7(12)(66)p4〜7(1941-12)

即ち書物には、専門学者の参考書の如きものもあり、一般国民の慰安のための書物もあります。前者の如きものは僅々五百sつもあれば十分に需要者に行き亙ものもあrますが、然し後者の如き書物に於きましては幾萬部を必要とすることもあるのであります。それをどれもこれも同様に大体千部乃至数千部程度に出してゐたことは如何にも無考へであったと言はねばなりません。現に館報や週報やラヂオその他の機関を通じて大々的に広告されてゐる文部省の推薦書が二千や三千刊行された程度では、到底間に合ふ筈も無い訳であります。高い文化と広い文化と言ふ立場から茲に十分考慮しなければならない問題が蔵されてゐるのでありまして、此の点に於て図書館事業関係者は大に協力してこの不合理を匡正しなければならないと思ひます。