書物蔵

古本オモシロガリズム

図書保管法 毀損亡失編:毀損も亡失も社会環境で問題になったりならなかったり

図書が貴重だった戦前においてハ、図書は書庫にしまはれ、自由に手に取ってみるといふことはでけんかった、ちゅーのは、司書課程の図書館概論や図書・図書館史で必ずおそはることぢゃ。
けど、戦後、図書の価格が下がり、亡くなること(亡失)や、破かれたりすること(毀損)は話題にならんやうになった。昨今では本てふ商品はマケプレやブコフで105円や1円でかへるやうになったねぇ。
しかるに先週だか、都内の区立図書館でアンネの日記が連続して(亡くなるのではなく)破かれるという事件が明らかになった。
発生してたのは年末かららしいけど、それがネットの話題になり、取材が入ったのが最近といふこと。
ネットではさっそく、ネトウヨがやったんだ、いや左翼がネトウヨを陥れようとした陰謀だといった風評がながれてたが、わちきは、

まーた、変な人がやったんだろー

と、あまりニュース性を感じんかった。といふのも、図書館の本は戦前から戦後、一貫して同じ程度に盗まれてるといふことが『公共図書館の論点整理』に書いてあったから。
ひとつ、ちとオモシロかったのは、

内田樹認証済みアカウント ‏@levinassien
センターが出動したということは今回の「アンネの日記」事件は、国際世論の一部が、これを個人的な、偶発的な非行ではなく、「日本国内の排外主義的傾向を政府が主導し、擁護していることのひとつの徴候」という見方を持ち始めたということだと思います。
https://twitter.com/levinassien/status/436787351507841024

というもの。ほんたうかいなと思ひつつ、ウチダ先生の面白いところは、事実関係でなく報道の結果、外部の人がどのようにうけとめちゃってるか考へてみませう、という視点。
とこの件は忘れてたんだけど、さっき、ツイッター経由で次の記事を知った。

中二病”の犯行ではない!? 被害は30年以上前から…図書館関係者が口に出せない『アンネの日記』破損事件の背景
http://otapol.jp/2014/02/post-594.html

図書館員は、むかしから壊されてきた本なので、騒ぎすぎとのこと。
これを読んで、ははぁ、やはりウチダ先生の視点は重要だなぁと思ったことぢゃ。
この本はある種の慣例として常に壊されつづけているのだという図書館員の証言がひかれている。
ということは、つまり、「「国際問題」、「人種差別」と騒ぎは大きくなっている」のは、安倍政権が対外排斥的な性格を持っていと、見られてしまっているからということになる。

アンネの日記』といえば、ホロコーストより生還した父親の手による編集を経て、今や「世界の記憶(世界記憶遺産)」とまでなった。ともすれば、中二病的な日記ゆえに、中二病をこじらせた現代日本の若者(突然、意味もわからず『我が闘争』とか読み始めたりするような)が、ナチス賛美の挙げ句にやっているのかと思えば、実態はもっとナイーブなものの様子。「国際問題」、「人種差別」と騒ぎは大きくなっているが、早期の真相解明が求められている。
(取材・文/昼間 たかし)

民主党政権下なら国際問題にならんかっただろうが、いまの安倍政権下では同じ事件が国際問題になってしまふという図式。
ほんに毀損も亡失も、問題になるかならんかは社会環境や政治情勢によるのだな、と思ふたことぢゃ。
わちきなど、手塚治の赤本マンガが亡くなったことのほうが百倍重要なのぢゃが。。。