書物蔵

古本オモシロガリズム

「誘引による分類(づけ)」まとめ(かきかけ

先々週あたりに、適当に書き散らしたエントリ*1、にゃにがにゃんだかワカランところもあらう。
わかりづらさの原因はいくつかあるが、基本は次の別々の問題がさみだれ式に出てきてしまったところによる。

  1. 「水伝(みずでん)」の「正しい」分類番号は何か?
  2. 「誘引による分類(づけ)」は、「正しい」か「誤り」か?
  3. そもそも「誘引による分類(づけ)」とは何か?

で、この先、拙ブログではなるべく1.水伝分類の正誤については言及しないようにしたいと思う。理由は2つ。論理的には2, 3.の誘引分類の問題の、1事例にすぎないということ(つまり、誘引分類の正誤が確定しないと、なんともいえない)が一つ。もう一つは、これは「正誤」の問題のはずなのに、「正邪」の問題ととらえるファン*2が、「水伝」という本にたーくさんついちまったから。正シガリストや熱心党のファンが憑いちゃった事柄については、落ち着いた議論などできようもないし、落ち着いた議論をするなら、べつに水伝でやる必要がないといふことになる。
それに、どこぞの図書館が考えなしに水伝を147に再分類しちまったあとぢゃあ、いまさら「435.44でも今までの付与法ぢゃあ、特に問題なかったんよ」とか言っても、熱心党はいふまでもなくどこぞの図書館すら聞くわけなかろうよ。むしろ、うかうかと言はれるがまま分類を「訂正」したことを決してうかうかでないとカッコつけんがために、図書館情報学上の論争で負けたとしても絶対に再々訂正はしないこと請け合い。だって「訂正」が「誤訂正」だったことになるからね。日本において役所はあたかも教皇がさうであるごとく無謬ぢゃ(σ^〜^)
それよか過去現在未来の日本の分類付与実績全体に関わってしまふ誘引分類問題につきてまとめるほうがなんぼかまへむきだわぁな(*゜-゜)

過去記事リスト

いちおう過去の関連記事を並べるが、これは自分用で読者諸氏がみる必要はない。長いエントリが多いから。

  • 正しくない言説を載せた本も定位置に置くべき:消極的自由主義の観点から
     http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20110530/p1
     「誘引による分類」といふ分類の付け方の慣例から、自然と水伝が435.44になったにすぎないと指摘。分類作業では言説の正邪や正誤を判定しないし、すべきでもないと主張。
  • 思想の自由に直接かかわる一般分類規程がある:地味な学問のド派手なる論争本をネタに

 http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20101030/p1
 平勢隆郎vs.小沢賢二の古代中国天文学についての論争に、井上了氏による関連本(なんと民明書房刊!)が出た。反論本はどこに分類すべきか通則で決まっているが、それがただの規則ではなく、利用者の自由な判断に資することを説く。

  • 知的な自由は大言壮語でなく、具体的な手段で担保したいもの
     http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20130204/p1
    消極的自由主義を守るのに、「政治的に正しい」「前衛」が呼号する「自由」言説でなく、「制度的保証」として分類の些細な通則で自然に守られてしまふほうが賢い、と森さんに誉められた話。
  • 自由や自由、なしておまいは正シガリストから嫌われるのか:図書分類の論争から
     http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20130205/p1
     本を主題(○○について)でなく、流派や観点、あるいは著者の属性によって分類するということは、支那目録学や、麓鶴雄の皇道図書館学、シュミットくんのナチス図書館学と(構造が)同様であること。戦時中の「図書館の日本性」論争が同じ構造で楽し。
  • 自由主義的な図書館では何が起こるか→人はまちがう自由をもつ
    http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20130205/p3
    政治的に正しい」図書館で起きることを想定。棚のまへに立つだけで、利用者の「正しさ」がわかる!
  • ここは楽しき古本ブログなのぢゃが、あへて図書館関係者なるものに文句をバ(´・ω・`)
     http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20130207/p1
     シロートさんはともかく「専門家」「専門職」ならバ、図書分類の慣例や通則を知らんで水伝をやり玉に挙げるのはオカシイと指摘。

術語について

このエントリのお題は「classification by attraction」という現象についてなのだが、実はこのフレーズ、原語の英語の段階でさへ、いくつか同義語があるし、そのうへ日本語に訳されたことがものすごーく少ない。
さらにいへば、先行訳「誘引による分類」といふ訳語は日本語でもフレーズのままであり、文章のなかで扱うのがきはめてめんどくさい。わちきの好みではちとないんだけど、むりくり漢語表現で複合語にしてしまほうとおもふ。とりあへずわちきこと書物蔵はまったく同義の意味として「誘引分類」といふ四文字熟語をつかふことにいたしたい。
英語の同義語に「slot-itation」といふのがDDCにあるし、昔の記憶では「attraction by term」というフレーズも同義語ぢゃった。それぞれ、「当て嵌め」とか「名辞による誘引」とかいふやうに和訳できやう。
じつはこの誘引分類は、分類項目名(図書館情報学では、名辞とかtermとかnameとかいふ。みな同じ意味)に引っ張られちゃふ現象であって、by attractionちゅーよりも、by termといったほうが理解しやすい。また、classificationはどうやら分類表のことではなく、分類法、つまりclassifyすることぐらいの意味で、誘引分類という分類表や分類法があるのではなく、誘引分類といはれる分類付与の傾向ないしやり方が(ここではその良し悪しは措く)あるよ、ということである。
で、1965年にDDC委員会は17版序文で、かような分類のつけ方が今まであったけど、このつけ方は委員会として表全体の運用によくないことと思うから、代替措置を用意しますから禁止させてもらいますよ、という方針を打ち出した。
ところがフシギなんだよねー。よくないことで禁止したはずなのに、現在でもこの用語がDDCに載っている。それに(これはまだ個別にみとらんが)1984年の国会の専門家たちがいふには、結局やまらなかったといふぢゃあ、ありませんか。それに、これは再度考察すっけど、ちょっと考えるとどうしても誘引分類せざるをえない場合というのが結局残されちゃふことが(単なる論理の問題として)明らかなんだわさ(。・_・。)ノ
1984年の国会連による「誘引による分類」をさらに受けた変形版として、近年、吉田先生による「誘引による分類」といふのがあるけれど、これは、議論を止めてしまふ不適当な訳語と思ふ。意訳しすぎといはうか。

「科学」に「疑似」はありえても、それ以外に

いろんな前提、場合分けが必要なのに、それらがぐちゃぐちゃに語られていること

classificationist 表を創る人
classifier(indexer) 表にあてはめる人
decoder
たとえば、今回の「誘引分類」が発生するのは

一般分類表って、ほんとに「観点分類」表なの?

 一部の

「誤分類」とは言い切れないこと

正確には、誘引分類には実務上やむをえない場合があること
理由:観点

*1:このエントリちゅー言葉も、図書館情報学では「記入」などと訳され、ワケワカランが(σ^〜^) よーするに、「一筆」のこと。って、ますますワカラン? 伝統的に本1点分の情報のことぢゃ。ブログでエントリちゅーと、だいたい1日分の記載。

*2:わちきのいふ「正しがりすと」。消極的自由主義でなく、積極的ななにか主義に立つ人々と言ってもよい。