書物蔵

古本オモシロガリズム

奥付研究の解題書誌(刊行年順)

管見のかぎり、他の奥付研究文献について言及しているものはほとんどないのは残念。孤立してやっとる感じ。奥付を集めて、過去の法令を見れば足りると考えられているのだろうか?

  • 日本出版百年史年表 / 日本書籍出版協会. -- 日本書籍出版協会, 1968 ※事項(件名)索引がないので、通覧する(!)しかないのだが、この年表でかなり細かいこともわかる。出版史研究文献なら必ず参照しているが、常識に類するとてあまり言及されないのは残念。
  • 太田真舟「戦前の納本・検閲:内務省の発禁本について」『日本古書通信』40(10) [1975.10] p.5-7 ※著者が昭和10年代前半に納本担当の出版関係者に聞き書き。・納本の3日前は、厳重に守られていた。・納本が遅れたら、奥付の月日を訂正しなければならない。・遅れても発禁の対象にならないもの(とくに官庁出版物)は、説明し、月日の訂正捺印で受理してもらいやすいと聞いた(伝聞)。・納本の本の月日が訂正されていれば、それが法定納本の正式な月日。・市販本は訂正されていないらしい。
  • 八木佐吉「奥付概史」『図書館と本の周辺』(5) p.50-72 (1978.10) ※現在まで一番記述量が多いもの。ただし、前半は出版法制略史。出版条例(M8)が奥付に定価表示を指示。印判で定価が押印されたものが当時多いのは、条文にそのような表現があるからでは、とする。刷り込み定価は明治十年を過ぎた頃からとも。M20の出版条例と版権条例で奥付の事項は決まるが、奥付の書式は江戸期から引きついだ業界の慣例の反映とみる。戦時中の奥付統制に詳しいのは、おそらく『出版百年史年表』を参照したからだろうが、出典は明示されない。S18.1.21から編著者・訳者の略歴を奥付表示すること、S18.1外函廃止命令、S18.4上製本の承認制などにも言及。終戦後、「徐々に戦時体制の事項は奥付から消えていって昭和十五年以前の型式に戻った」という。インフレで小売店がゴム印で定価を奥付に押印したり、それを禁じる岩波本の奥付記載などのことも。
  • 兵働辰巳「明治初期の書物の奥付」『図書館と本の周辺』(5) p.73-77 (1978.10) ※半分は巻末の広告の事例報告。イマイチ。書名や定価がないことを指摘。
  • 明治出版史から見た奥付とその周辺 / 稲岡 勝. -- 出版研究. (通号 15) [1984] 未見
  • 松本幸一「奥付の定価表記に関する史的考察」 『大学図書館問題研究会大図研論文集』( 18) [1996.02] 1〜13 ※奥付表記の根拠法令などにつき一通りのまとめ。史料へのレファレンス不見当。
  • 『奥附逍遥』 奥書・刊記そして奥附 (佐野眞・追悼文集 佐野眞・著作選集) -- (佐野眞・著作選集(縦組の部)) / 佐野 眞. -- 文献探索. 2002 未見
  • 『奥付雑考』 出版条例まで ほか (佐野眞・追悼文集 佐野眞・著作選集) -- (佐野眞・著作選集(縦組の部)) / 佐野 眞. -- 文献探索. 2002
  • 出版文化 ; 第1巻 - 別巻. -- [復刻版]. -- 金沢文圃閣, 2003. -- (文圃文献類従 ; 6-3, 6-4, 6-5, 6-6, 6-7, 6-8 . 戦時占領期出版関係史料集 ; 2) ※重要な資料。
  • 田中栞「四面書架(1)〜(2) 本の奥付は信用できない」『紙魚の手帳』 (26) [2004.5] p.10〜19, (28) [2004.9] p,14〜23 ※現物及び国会の近代デジタルライブラリーの奥付を使っての実証的考察。。奥付だけでなく、帝国図書館が押印した「受入印」(の日付)を援用して考察。
  • 石田豊『書籍探検隊が行く! 奥付の変遷を追え!」『ず・ぼん』(10) [2004.12] 140〜159 ※図版多数。考察は少ない。
  • 高梨章「戦時の本の奥付を見る」『日本古書通信』(933)(2007.4)p.24-26 ※奥付の査定番号が、「委員会の部会番号+査定順?+級別(礼・信・智など)」なので、部会番号からジャンルが、級別から読者対象がわかる。まるで今のPコードだなぁ。