書物蔵

古本オモシロガリズム

読売「今日の新刊」欄は1925.4.1から

某図書館にて閲覧したる「今日の新刊」の新切(しんきり;新聞切抜)のことが頭をはなれず、ちと調べてみたら、ちゃんとこの欄の連載最初に口上書きがあった。

読売新聞が東京書籍小組合の指定新聞に指定されたことは過日の社告通りである。従って本紙は本日から全国の書籍当業者へ配布されるは勿論、本日の紙上から連日その日その日の新刊図書一歳の目録が文芸欄内『今日の新刊』に連載される外、尚本月より印刷される毎週一回の『日曜付録』(四頁)にも特に読書界出版界に関する記事が掲載される。幸に読者各位の清鑑を仰ぎ得れば満足である。
              大正十四年四月一日 読売新聞社
「「今日の新刊」欄 本日より連載(社告)』『読売新聞』(1925.4.1朝)3

そして続く4ページに「今日の新刊」欄があり、書名、著者、定価、送料、発行所を記した41点のリストがある。宗教、哲学、道徳、教育、産業、自然科学、法学、地理歴史、工学、音楽、文学といった分類別排列をとっている。データの出所についての説明文はない。
1日の社告と、ほぼ同文が2日のp.2に載っている。
2日のリストには、1日のものになかった「非売品」が5点紹介されている。『女子現在文学読本』(明治書院)、『北里研究所一覧』(北里研究所 築地活版)、『物理学教科書教授資料』野田貞(開成館)など。
1925.4.15から、「今日の新刊」に加え、「「内務省警保局」にて本社調査」というサブタイトルか説明文に見えるものがついている。 

本紙連載の『今日の新刊』欄は、全国読書家諸君並に地方書籍商各位から、非常に有益であるとの大好評を以て歓迎されていますと同時に、御親切なるいろ/ な御注意や御注文の投書を毎日戴いて居ります。まことに感謝に堪えません。就ては各位大多数の御希望に基き、明日からの本欄には発行所所在地を一々明記する外、尚ほ切り抜き保存の上に好都合でせうから、調査の『月日』を記入いたします。
「[月曜付録]予告「今日の新刊」明日から改訂」『読売新聞』1925.5.4朝)

なるへそーぉ、ちゃんと新切のことを考えて、というか、ユーザ側からのニーズにこたえてということで、日付が入るようになったのね。実際、翌日の欄には、

今日の新刊――「内務省警保局」にて本社調査(五月四日)
書名 著者 定価 発行所
大蔵経(第十一巻宝積部)高楠順次郎 非売 小石川区関口台町/大正一切経刊行会
宇宙及人生(下巻)ショーペンハウエル著 増富平蔵訳 四・〇〇 本郷区西片町/玄黄社
『読売新聞』(1925.5.5)4

と、論題のとこに日付が載ってをる。
欄の初期にあった「送料」はいつのまにかなくなっとるが、確かに出版者のとこには番地はなけれど、住所が載ってをる。もちろん、当時は郵便物はこれで届いたと見てよからう。
で、この日付が何の日付かなんだけど。

正誤記事からみる日付

1927.6.3に、「『今日の新刊』正誤」という記事があり、

岩井順一氏訳パタソン・スミス著『来世の福音』(市外大森雄々社出版)を内務省納本には定価記入なきため非売品としたのは誤で定価一・五〇の売品である

とある。ここから言えることは、売りたい人か買いたい人(ないし買った人)がこの欄の内容にクレームをつけたといふこと。それに対して、読売新聞記者(木村武雄か?)は内務省図書課で、納本現物を見ていること(もしかしたら、納本届書かもしらんが……)。現物の奥付に定価表示せねばならん義務は明治初期を除き、必ずしも法定されとらんかったよーな(*゜-゜)

  • ゼ・パタソン・スミス 著 ; 岩井順一 訳. 来世の福音. 雄々社出版部, 昭和2. 282p ;533-269 ※奥付 四月十六日印刷 四月十九日発行 表紙(内交・昭和二・四・二〇)

奥付をよく見ると日付のところが一度訂正されたようにも見えるが……不明。とりあえず印字のとおりとしておく。いま読売の同欄を通覧するに、毎日p.4に載っていて、4/20付の同紙p.4に4/19分とてこの本がでてくる。ということは、この欄の日付というのは、ほぼ奥付記載の発行日とみてよいだらう。

この知識の汎用性