書物蔵

古本オモシロガリズム

月に吠える

オタどんがツイッターで教えてくれ、

出版史、検閲研究が文学研究に寄与する好適な事例となる論文であり、関心ある方には、ぜひ全文を読んでみられることをすすめたい。
http://bookbookbookish.blog.eonet.jp/default/2013/09/post-52d6.html

と、たまにのぞかせてもらっとる「表現急行」のブロガー氏も述べておったのと、別途コピーが入手できたので、次の論文を読んでみた。

  • 牧義之「萩原朔太郎『月に吠える』発行の経緯に関する考察:内閲、削除、作者の誤認」『文学・語学』(206) p.26-36(2013.7)

(かきかけ
この論文は、「納本の際に訂正された『月に吠える』の正式な発行日を確認し、刊行に至るまでの実態的な流れを諸資料を用いて検証」し、結論として、「『月に吠える』は作者自身〔=朔太郎〕が発表した抗議文中の事実誤認によって〈発禁詩集〉という誤ったレッテルを〔後世の人々に〕貼られ」(p.26)ってしまったが、発禁詩集ではなかった、と立論するもの。
拙ブログの読者ならばご存じ、太田真舟が証言(笑)しとった話があったでしょ。納本の際に内務省警保局の窓口で、奥付の日付をあわてて訂正する話(σ^〜^) その訂正日付から、「正式の発売日」は大正6年の2/15ではなく2/28と指摘する。たしかに国会本の発行日はそうなっとるから、納本日は発行日の3日間前、つまり2/25よりも前、まあおおむね2/24・25あたりということになるねぇ。
なのに、削除しなきゃ発禁にしちゃうぞ、という内務省からの「内達」は2/21にあったのだから、ずいぶん前で、このかなり前というのは『月に吠える』は納本の前のゲラを「内閲」してもろうておったということにすれば説明がつくのではないか、というのが牧論文のキモ。
ただわちき思うに、かならずしも内閲を想定せんでも、フツーに2/12に製本済みが納本(=2/15発行予定)されたと想定しても、説明がつくと思うがの(=゚ω゚=)