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古本オモシロガリズム

【BSHはもう】「『基本件名標目表』および件名標目委員会の今後についての提案について」について【やめたら】

入手せる『図書館雑誌』(104)1 (2010.1)の彙報欄(p.58)にちっちゃーーーく、超・重要な記事が(・∀・)
JLA件名標目委員会から、JLA常務理事会へ次のような提案があったという(*´д`)ノ

BSHとNDLSHを統合し、NSH(Nippon Subject Headings;以下、「新NSH」という)にする(要旨)

というもの。
デタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━ッ!! エヌ・エス・エイチ!!!
びっくりした(×o×)
理由は「複数の件名標目表の並存は国内の書誌データの標準化の点から解決すべき」だからとぞ。まあ賛成だけどちょっと遅いねぇ(・∀・`;) そう、だいたい30年ぐらい(σ^〜^)
常務理事会側は、「慎重に検討」したいという。それって、不賛成ということ?(・ω・。) 理由は、(1)BSHが民間マークに既に普及していること。(2)NDCとの関係。(3)冊子体の刊行の可否。(4)維持体制や(5)NDL業務との関連、だそうだ。
(6)件名委員OB、会員、現場職員からヒアリングする必要もあるとのこと。
なんだかなぁ。30年遅れで新しくも正しい方針に立ちはだかる論点について考えてみた(・∀・`;)

(1)BSHが民間マークに既に普及

TRCマークやNippanマークとかに付与されてる、ってゆーんでしょ。でも、その付与されたBSHを、まともに引けるOPACの話って聞いたことない。MARCの件名データなんて、調べ物をする人(end user)に引かれなければ、なんの意味もない(図書館本はフツーNDC順排列の「開架」でend userが直接手にとってしまうので)のだから、国内でBSHをひけるOPACがないのに(その意味では、Webcatの主題標目蔑視が影響している)、民間MARCに普及していても、現場にゃあ、ぜんぜんカンケーないということになる。そもそも日本の場合、件名自体がend userに普及しとらんのだから。

(2)NDCとの関係

「かんけー」ってゆーだけぢゃあ、ナニが問題なのかわからん。しょーがないから、こちらで問題らしきものをひねり出してみるべ(  ̄▽ ̄) ひとつは件名標目についとる分類、(「代表分類」という。エントリ末尾参照)の件、もうひとつはNDCの巻末索引の件。
けど、どちらも、たいした問題じゃないのでは。いまのNDLSHにだって代表分類はNDCでついてをるし。NDCの索引語なんて、いまでもぜんぜん足りないぐらいだお(^ω^;)

(3)冊子体の刊行の可否

これは現行のNDLSHがネット上にのみあって、冊子が出版されとらん、それはコワイと、いふてをるのだらう。
もちろん純粋に、紙媒体でないと一覧性が確保されんとゆー機能上の問題もあるけれど、そんなことより重要なのは、JLAの収入問題なのでは(σ・∀・)σ BSHならぬNDCが(電子化は1995年に済んでいるくせに)いつまでたってもネット上にでてこんのは、JLAの収入の、重要な部分をNDCの冊子販売で占めとるからでは。
それとおんなじで。
BSHの冊子による収入を新NSHでも確保できるのか、とゆーことを常務理事会は心配しているとみえるなぁ。まあ不純な反対理由ではあるのだが、重要な反対理由でもある。
ただこれには別の力学が働くとみれば問題ないのでは。
といふのも、現在、まったくend userに普及してをらんBSHがなぜに冊子で存在するのか、とゆーことを考へてもみよ。
あれはねぇ。
教育用なんよ。実用物ではない(キリッ
司書課程が存続すれば、冊子のニーズは残るから、なんやかんや言っても、冊子はJLA経由で出ると考えてよいでせう。新NSHにすれば、むしろ実用性が高まる(ってか、いまがゼロなんだから高まってあたりまえ)わけだから、販売部数は増えるのでは。

(4)維持体制

ああ、これは確かに問題。
ってか、今の若い委員はしらんが、山下栄あたりから基本的にSHを日本的に寸詰まりに理解(誤解)してきたんで、新NSHの主導権をJLA件名委員が握るようであれば、さきざき心配だわさ。
あとは委員会のロケーションの問題*1
関西系の指定席であることが問題なので、それをやめねば。もし、どーしても関西系に指定席をということであれば、分類委員会を関西系にいれかえればよい。

(5)NDL業務との関連

まあ、これも問題ではあるわなぁ。JLAとNDL(国会図書館)は基本的に他者(ん?(・ω・。)他社か)であるからして、合従連衡で庇を貸して母屋を、ということがコワイのかも。だからやだ、というのもわからんでもないが、たしかDDCなぞはLCあたりにDDC課とかつくって管理しておるのではなかったかな。ん、OCLCのほうだったっけ?
ただ、分類項目とちがって、件名標目は日々、生成させねばならんのだから、実働部隊がなけりゃあ表の維持などままならんことは事実。実際、現行でもBSHは、その新設件名の候補を、TRCデータ部から提供してもらっていたのでは(σ・∀・)σ

(6)ヒアリングする

対、件名委員OB  敗戦研究というのならいいけれど、現状のてーたらくに日本の件名をしちゃったのは委員OBではないか。東郷平八郎が、ひこーきなどけしからん、なんていうことにならねばよいがの。
対、会員 まー、これが一番穏当なところかしら。
対、現場職員 会員と言わず、ことさらに「現場職員」とゆーのは、どこらへんを排除したいのか、いぶかしく思うばかりだが、これはかなーりリスキーなのでは。だって誰も使ってないわけだから。使ってない人々に聞いたって、頓珍漢な答え(過度に期待するか、過度に無視するか)しかでないのでは。
ほんとーは学者先生に聞くのがスジなんだけれど、学者先生方はブザマな実用品はきらいだからなぁ。ってか、計量書誌学系の先生に聞くと、失敗しそうな気が… カラシニコフこそ必要なのに、64式とか開発されちゃう世界だから。帝国陸海軍の二の舞ぢゃ。

ひとつだけ積極的提案

と、さんざネガティブなものいいをしてしまったので、さいごにポジティブなものいいを。
それは名称について。
Nipponは日本主義なので、Japaneseにしたらどうでしょう。Japanese Subject Headings ; JSH がよろしいぞ。

附論:件名の代表分類とは

代表分類の定義、って、じつはないんだけれど(少なくとも日本語では)、あえてここで定義すると
その標目を要約主題として付与された著作に付与される可能性が高い分類項目ぐらいのことになるかしら。
件名標目表ってーのは、端的にいって辞書の一種なんだけど、語と語の関係についての情報(上位語や下位語への参照など)に場所(版面、紙面)をとられてしまい、語(件名標目)の定義を書く余地がすくない(scope noteは定義じゃないよん)。その(定義の)かはりとして記載されとるのが「代表分類」なのだ。
例示すると、

ラーメン(工学) 501.38 ; 524.7

と表にあれば、「501.38 応用力学の下位」や「524.7 コンクリート構造」に分類されるような、ラーメン(Rahmen)構造の意味で「ラーメン(工学)」を標目にしているので、ラーメン(拉麺)を工学的に解析した本には、「ラーメン(工学)」を付与できませんよ、ということなのだ。
けど、この代表分類ってー概念はいたしかゆしで。
たんに補助的なものにすぎないのに、実務者というのはスグ、趣旨を忘れ逆さに考えたがっちゃうんだよねぇ(・∀・`;)
具体的には、

この本には分類をこれこれにしたから、この代表分類がついている件名しか付けられない

とか、

この件名をつけちゃったから、分類はこれしかつけられない

とか。
はっきりいって、両者は関係ないシステムなので、上記のようなことを言い出したら、それは、主題標目ほろびへの第一歩と考えていい。
ってか、TRCの件名のつけかたがこーだったよーな(σ^〜^)

*1:これについては一度書いた。いったい誰が政策論をやるの?件名標目表研究http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20070222/p2