書物蔵

古本オモシロガリズム

本の中身を見て要約主題を把握し、主題標目を付ける:『同人誌の変遷』を事例として

かやうなる本がある。

  • 同人誌の変遷 : 文芸学科所蔵同人誌を中心に. -- 東京 : 日本大学芸術学部芸術資料館, 2010.6. -- 340p ; 21cm. -- 注記: 平成22年度日本大学芸術学部芸術資料館企画展 2010年6月22日〜7月23日 ; 付録 「同人雑誌集覧 附・研究論文・翻訳1」(日本大学芸術学部文芸学科研究室内文学・雑誌センター 昭和41年12月発行): p[88]-340

この本の構成はフシギなもので、上記の記述からも類推できるやうに、前半の1/4が同人雑誌の歴史、後半の3/4が同人誌の目録になってゐる。

主題を要約する

この本の要約主題はなんであらう。
2つの解釈(といふか、要約の仕方)があらうかとおもふ。
あくまで編集意図やタイトルに忠実に、同人誌の歴史の本が主たる主題であって、同人雑誌目録は付録であると考えるか。
逆に、この本の歴史的なりたちとページ数の多寡から、同人雑誌目録におまけの論文をつけてリプリントしたと捉えるか。
しかし、ビミョーなページ数であることよ。これでどっちかがもっと多かったり少なかったりすればいいんだけれどねぇ。

それを件名に翻訳する

とりあえず前者とみてとりあえずNDLSH風に件名をつけるとこうなる。※( )はNDLSHの現行ルール上つけられないが、本来ならルールを変更してこのようにつけるべき細目。

s1:同人雑誌( -- 日本文学) -- 歴史( -- 明治以後)

ただ、後半があまりに惜しいので、周辺的主題として第二件名をつけるのが親切。

s2:同人雑誌( -- 日本文学) -- 書目

分類にあてはめる

また分類をつけるとすると、要約主題はs1のとおりなのであるが、NDCなら、日本語雑誌の分類051の注記に従って特定主題の雑誌05に置けないので、特定主題、つまりここでは、(日本文学) -- 歴史( -- 明治以後)の分類番号、NDCでいう910.26に分類されるということになる。
はぁ説明するとめんどくさ。

よい教科書がない

ってか、要約主題というも周辺的主題というも、肝心のNDC序文などに(図書分類として当然すぎるため)明確に書かれておらず、また、上記でわちきが件名として事前結合形として表現した文字列も、「標準列挙順序」の話をしらないとうまく事前結合させることができないのだ。
で。
これらを上手く説明するような教科書が、ほとんど1冊もないんだよなぁ日本には。
唯一、JLAの教科書シリーズで『資料組織演習』にひととおり書いてあるきりなんだけれど、ずいぶんと舌足らずだったりもする。これは業界全体で考えなおさねばならんことですよ。

答え合わせ

とまれ、答えあわせをすると。NDLのデータはこんなん。

s1:日本文学 -- 歴史 -- 明治以後
s2:同人雑誌
NDC(9):910.26
NDLC:KG311

あーあ(・∀・`;)
あっているのはNDCだけ。
件名がちがってるねぇ。s1は同人雑誌でなけりゃあ。それにせっかく2つ件名をつけているのに、周辺的主題でなく本来s1であるべき同人雑誌という件名に細目として付けられないもの(同人雑誌の種類をあらわす主題細目)をむりやり主標目としてつけちゃって(・∀・`;) どーしよーもな。これじゃあノイズが増えるばっかで複数つけられる件名が生かされない。せっかく2つ目の件名をつけるんなら、後半(といっても大半)が同人誌目録なんだから、

s1:同人雑誌 -- 歴史
s2:同人雑誌 -- 書目

でしょ。それに、日本文学 -- 歴史 -- 明治以後なんちゅー件名をつけるヒマがあったら、同人雑誌に一般細目「歴史」をつけなけりゃあ。
日本の件名は、標目表をいじるのも結構だけど、こういったところもカイゼンしてほしいもの。せっかく現物を見てつける環境があるところでは、きちんとつけてくれないと。