書物蔵

古本オモシロガリズム

寂しき「知の殿堂」を「マンガの殿堂」に

とうとう気づいたようですの読売さん。地方版(大阪版)らしいが。
国会図書館の分館・関西館が「寂しき知の殿堂」であるとの記事。

寂しき「知の殿堂」国会図書館関西館 来館1日200人
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20091122-OYO1T00208.htm

一見、廃止になった坂本タンの「私のしごと館」のように、来館者がいないから廃止せよ、と書いているようにみえるが…(゜〜゜ )
まあ、中をよく読むと、郵送コピー機能とかサーバ置き場の機能はきちんと評価されていて、本文レベルではそれなりにバランスの取れた記事になっている。こりゃーデスクが扇情的なヘッドラインをくっつけたね(σ・∀・)σ 執筆記者はどう思っとるかしら(*´д`)ノ

ネット上の反響

ネット上では、国会さんに同情的な意見が多数をしめる。
http://b.hatena.ne.jp/entry/osaka.yomiuri.co.jp/news/20091122-OYO1T00208.htm
http://b.hatena.ne.jp/entry/osaka.yomiuri.co.jp/news/20091122-OYO1T00208.htm?from=top
http://b.hatena.ne.jp/entry/blog.livedoor.jp/pomz/archives/51649702.html
わちきの分析では、ネット住民は、(1)国会しかフォローできないサブカル資料に親和的だったり、(2)リテラシーが高めである→貸出統計だけで図書館を見ない、(3)ネット利用=遠隔利用を当然・良い事とみる、といった例外的好環境にあるからだと思う。でも、一般国民や国民の代表がそうだということにはならない点に注意すべき。
オモシロなのは、なんと糸賀まさる先生が「インターネットの普及で来館者が減ることは予想できたことで、これほど広大な施設が必要だったのか疑問が残る」とコメント。これはコトバ足らずで、「これほど広大な〔直接閲覧〕施設が必要だったのか」という意味らしいが、ヘッドラインを含め、マスコミさんは、とにかく扇情的に読んでもらえるようにせねばならんからの(  ̄▽ ̄) イトガッチにコメントの責任を問うのはちとかわいそう(。・_・。)ノ 取材が来たときには追っ払うのではなく、リスクをとってお答えするのが正しい道であることは、このまへ論じた。(「公衆関係がワカラン公衆図書館は公衆便所並みに外注化されるであらう」http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20091121/p4

ニコクって憶えとる?

ニッコクぢゃないよ、ニコク。
国立中央図書館になにがしかの存在意義があるとしても、では遠隔サービスのサーバ置き場に洋書やらなにやらを買い込んで「これほど広大な〔直接閲覧〕施設」を用意すべきかどうか、これには疑義が生じて当然だったわけで*1
東京とまったく同じ蔵書内容のドッペルゲンガーを作るという「第二国立国会図書館(二国)」構想が、大蔵省のダメ出しでぽしゃった瞬間に、「二国(ニコク)」は迷走を始めざるを得なかった。関西館なるものが、関西にある館、以上のコンセプトを打ち出せなかったのは迷走の帰結。まだしも帝国図書館のほうのリニューアル新名称に「こども」という具体的なタームがあるのに、こっちのほうは、場所の名前でしかない。今回みたいなつっこみが出るのは時間の問題だった。
館長二階級降格事件(2005)に象徴されるように、国会図書館は長期的な政治環境の変化に見舞われとる。

これは、数十年スパンの長期的な構造変化だから、政権交代ごときは潮目ではない。え(  ̄▽ ̄) まさか政権交代ですっかり油断していたってか(゚∀゚ ) それはあまりにも太平楽な… 国権に直隷する図書館員とも思えませんゾ(σ・∀・)

「これほど広大な施設」を必要にする方法

このままほっぽっといたら、長期的には「これほど広大な〔直接閲覧〕施設」は縮小・廃止に追い込まれていくことだろう。で、もちろん、それもアリなわけだが…
んでも、もし、必要にしたいのであれば、来館者をひっぱってくるしかないわけで、それにはそれだけのコンテンツを用意せねばならん。
わりーけど、マンガ以外に、このネット社会にもかかわらず、数百キロの場所を越えてまで数万の人々を惹きつけるコンテンツをわちきは知らんなぁ。
そこで数年前、ちかくを通りかかったときに、がらがらな来館者をみて、こんなことを提唱してみた。

あーあ(・∀・`;) 一年に2度、コミケの隣接日にイベントなどをやれば何万人もの来館者があったものを(*゜-゜) 文化庁が国立マンガ喫茶を提唱したり、明大が米沢記念図書館を作ったり、もう、インパクトないなぁ(´・ω・`)
でも、もう一度、言ってみるか。。。

「広大な」国際マンガ図書館(関西)を

まずは関西館などという、意味不明の名前を改称し、「国立国会図書館支部関西国際マンガ図書館」としませう。
バカみたいに、こどもマンガ(上野)と大人マンガ(永田町)に分散配置なんかしとらんで(こんなの半世紀前の価値観だよ)、「広大な施設」に一括して置く。一括して見せる。ゆえに「広大」であるべき
マンガ雑誌はかさばってかさばって、もう、どーしよーもない。誰もが持ちきれなくなってしまふ。それを一括していくらでも保管する。どんどん寄贈も受け入れる。『まんがぶりっこ』だって蒐めちゃうゾ! ゆえに「広大な施設」でなければならない
橋下府政のもとで、継子あつかいを受けとる「国際児童文学館」をまるごと引き取る。ゆえにさらにさらに「広大な施設」となる。文学館の研究員をマンガ研究官に任ずる。フランス政府もびっくりの文化政策ぢゃ。
8月と12月を、マンガ月間とし、イベントや研究会などを打つ。来館者がワンサを押し寄せる。ゆえに「広大な施設」なおさら結構。京都奈良のタクシー業界、旅館業界など、満員御礼で涙ちょちょきれる。地元にカネ落ちまくり!京都奈良の議員センセも喜びまくり。
首都圏におけるマンガ研究は米沢記念図書館(神保町)と現代マンガ図書館(早稲田)、川崎市民ミュージアムの任せてしまうことになるが、関西圏でも、あたかもよし、京都府のマンガミュージアムや、京都精華大学マンガ学部もある。国際レベルでのマンガ研究は、首都圏と関西圏の両輪でする、というのも、オモシロいのではあるまいか。

附.趣味の図書館史

これがらみの趣味の図書館史エントリを参考までに

  • 【論文】職階法のもとで司書は…(まぼろしの図書館省1)

 http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20060205/p1

  • 司法・立法・行政・・・図書館。(゜Д゜)ハァ? (まぼろしの図書館省 2)

 降格事件までの、図書館大臣の本来的機能について
 http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20060916/p1

*1:最近では誰も指摘せんが、そもそも国立中央図書館の直接閲覧サービス自体が、存在意義が怪しい…