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古本オモシロガリズム

図書館目録って何のためにあるの?

ちょっと前、日本bibliobloggerが、中途半端なOPACなら、物品会計システムにしちまえ、と提唱していた。
まぁそれはそれで気持ちはわからんでもない。
ただ、そうしちまった瞬間に、図書館固有のデータ採取規則(目録法という)なんちゅーもんは要らないことになる(し、少なくともカタロガーなるものも要らないことに)。
でもじゃあ従来の日本図書館人が図書館固有のデータ、データベース(=図書館目録)をきちんと理解してたのかといえば、そうでもないような。
そもそも目録法の「パリ原則」で、目録の基本的機能が2つにまとめられているが、その日本語訳にいささかの疑念がある。

日本漢語訳がヘンなんだよなぁ(*゜-゜)

2つの機能はこんなふうに言うことができる。

  • 既知文献の有り無しがわかるのを「識別機能」(identification or "finding list"の機能)
  • 未知文献を検索条件から一覧表示できるのを「集中機能」
まあ、前者の「識別機能」はいいとして、後者の「集中機能」という訳語はいかがか。ってか不適切な訳語に感じられるんだよなぁ。ぜんぜん違う意味に受け取られる漢語のような。だって、英語じゃあ、collocationとあるよ。
まさしく、類似のものが隣に表示される(位置する)、col-locationという意味なわけで、隣接して表示されるぐらいの意味ではなかろうか。「隣接機能」とかのほうが正しい訳なのでは。
いま、あわてて丸善図書館情報学辞典』をみると、記述目録じゃなくて分類法(といっても図書館目録の中なんだけど)のほうの用語として

並置 collocation 分類表中において、下位クラス(つまり同格クラス)をそれらのクラスの類似性の度合いに応じて関連付けながら配置すること。

とある。「集中」よりも「並置」という漢語のほうがましだわな。
集中ではなんだか、ひとつに収斂というか、統合されていくというか、重なっていくという感じがする。語感としてはなはだ不適当。
重ならず、けれども隣に位置するということなんだから、「隣接機能」とか、「一覧機能」とかのほうが漢語表現としてよっぽどふさわしい。

  • ファインディング(識別)機能:おもに記述部分(タイトル、責任表示など)が担う

  • コロケーション(隣接)機能:おもに標目部分(分類、件名、著者)が担う
  • こんなふうに説明したほうがよかないか。
    既知アイテムの有り無しがわかるだけの図書館目録って、じつは図書館目録じゃないんだよね。てか、既知文献の有り無しが分かる程度の目録は、司書じゃなくとも、だれでも書けるわけで。
    未知アイテムがもしあれば、でてくる、という原理的に魔法の箱としての機能を担保するのが、さまざまな(いま日本じゃあ図書館員ですら、うざがって身に着けようとしない)分類法なり件名標目なりだったのだが…(*゜-゜)