書物蔵

古本オモシロガリズム

電子図書館は書誌的アクセスから

国会がやっているとかいう「書誌調整連絡会議」の議事録(国会図書舘月報552)を読んだら、上田先生がこんなことを言っている。

また昨今、現在のOPACは時代遅れとして、Web2.0を意識したOPACの改善提案がなされたりしている。しかし、連想検索機能を持つWebcatplusよりも従前のWebcatのほうが使われているとのアンケート結果に見るように、OPACを改善したり、新しい機能を加えたりする方向はさほど支持されていないといえる。

やはり。
連想検索ってのは、結局のところお子様ランチ(と言って悪ければ、一般消費者向け)なのだなぁ。
なくてもいいけどあってもいい、ぐらいのニーズのお客には「こんなん、どーでしょ」という機能はある。
けど、研究とか調査とか取材とか、「あるならある、ないならない、とはっきりさせたい」といったニーズに連想ナントカってのは原理的に答えられないからね。
そんなこけおどしの機能に税金をつぎ込むんだったらば。

古典的な機能が保障されてない

件名や著者名の典拠ファイル参照機能とか、NDCの前方一致検索とか、そういった古典的な目録機能をきちんと引けるシステム、あるいは、素人でも簡単に使えるシステムを開発したほうがいいと思う、ってのは、大昔から思っているが。
たしかに、従前のWebcatは十分に使いづらい。タイトルがword by wordでしか引けなかったり、検索結果の並べ替えができなかったりとか。
わちきが古書収集に最初にNDL-OPACを見てるのは、なにも、国会図書舘が偉いからでもなんでもなくて、分類や件名から引いたり、典拠ファイルが見れたり、並べ替えができたりと、わちきにいわせれば、これくらいのことができなきゃ、調べモノなんて、なんもできんでしょ、ってな基本的機能が、それなりについているからなのだ。

でもNDL-OPACにもヘンなとこアリ(・∀・`;)

もちろん、ならび順のデフォルトがタイトルの読みだったり(これは表音文字でない日本語では、あまり意味がない並び順で、特にデフォルトでは不便で、ぜひ刊行年順に直すべきと私は強くつよく思うし、直さないんなら直すまで言い続けるつもりのものではあるんだが)、書誌にぶら下げてる件名に参照形を表示させるアフォ機能をつけてみたり(典拠ファイルを整備したフリをするだけにすぎないし、そんなことよりも時代区分や地理区分をきちんとつけるほうが先で。さらに、書誌なんかで見せるようなものではなく、典拠ファイルをかませる機能をつくるほうがよっぽど先で、なおなおさらに、こんな機能で件名検索が改善されたなどと思い込んでしまうアフォ司書を生みだしかねん罪作りなシステム)とか、へんてこなとこは結構あるんだけどね。

無から有をつくれると思う人々

けど、電子図書館論とかが好きな連中や、システムオタクに限って、無から有をつくりだそうとしたり、事業コンセプトをあいまいにしたまま事業をはじめちゃったりするからなぁ。
そういった電子図書館学派って,わちきにはアフォに見えてしまうのだわさ
なぜといえば。
コア・コンピタンスを誤解しとるから。
岡田真という人が『カレントなんちゃら』いう雑誌に図書館サイトについて書いていて、そんなかで、どの画面からでもOPACが引けるサイトを高く評価しとるけど、正しい。

図書館で本当に作り出しているものとは

図書館の強みとは、本がある、ということなわけだが、それは、半分しか正しくない。
きちんとした書誌データと、そこそこの古典的検索ができるOPACがあること。
これに尽きる。
1970年代の貸出大躍進の影響で、館界ではまともに目録を語るということがされなかった。とくに公共図書館系では。
だからどの図書館でも、OPACは、「これありますか→あります・ありません」の、ただのfinding listでしかなくなってもーた。
分類・件名の古典的機能は、探してるご本人が見たことも聞いたこともない「未知文献」がみつかるところ、とは、司書講習の教科書にでも必ず書いてあることだよ。
図書館という社会機関が創っていて、他が創っていないものってのは、著作と著作の関連づけ(標目)であり、関連づけを格納する場(OPAC)なわけで。
これをうっちゃっといて、図書館サイトに客を呼ぼうって企ては、必ず絶対に失敗すると言ってよい。
だって、司書がそれ以外の何かを生産しとるかね。

書誌的アクセスを中心にサイトを立て直すべき

「書誌的アクセス」ってなんじゃらほい? って…
まぁ具体的に分かりやすく言えば、岡田真さんのハナシをそのまんま借りて言うのがよい。

どのページからでもOPACが参照できるようにすること

ただ、それだけ。
もちろん、レファ指南書きの書誌事項から直接OPACの書誌へ飛べたりとか、なんてシャレた機能がありゃあそれもいいんだけどね。
でも。
ただ、それだけ、
のことが出来ない。できてない。
できてないのはなぜか。
電子図書館派が独自に新しくコンテンツを作ろうとするからじゃ。ついでにいやあ、コンテンツだけならまだしも、検索システムまで独自のものを別立てで造ることなどを考えすぎる。

上記、古典的なことがフツーにできるOPACに、すべてのコンテンツを統合していく

これだけで、図書館サイトは使えるものになっていくでせう。