書物蔵

古本オモシロガリズム

(社)東京移動図書館について補遺

友人Cは相変わらず、「ネットに書いたらパクられちゃいますよっ!」と受話器の向こうで騒いでいるが、なに、こんなに狭い図書館界、パクったらすぐバレちゃうのだ(=゚ω゚=)

気づきと概念の混乱について

実はこの団体、わちきは2年前に気づいていた。http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20070612/p1
ちょうど金沢文圃閣からトンデモめずらか図書館本、楠田五郎太動く図書館の研究』(昭和10)を買ったところだったので「動く図書館>>移動図書館?」と連想が働く状態だったところへ、たまたま、『古本用語辞典』の「東京移動図書館」の項目を見て、「むむっ!`・ω・´)o こりは〜」と思ったのであった。さっそくググったら、すでにお一人「読書日記http://tsysoba.txt-nifty.com/booklog/2005/08/post_87bd.html
」さんが気づいていたひとがいたけれども(^-^;)
しかしまぁ、「動く」とか「移動」ってーのが、(日本では)戦後の移動図書館ハウルの動く城?)を連想させちまうが、戦前は巡回文庫・貸出文庫の意味合いがつよかったことに気づいたのであった。
実際、つぎの記事でも巡回文庫あつかいされている。

市内唯一の私設巡回文庫東京相互書園は昭和二年の新春を卜し新たに入山祐次郎、林田亀太郎〔、〕西久保弘道、徳富猪一郎、吉野作造田川大吉郎、佐々木照山、道重信教の八名家を特に賛助会員に仰いで新活動を開始することになつたと〔。〕尚現在の麻布区三河台町の書庫も狭隘を感じて来たので目下分庫の設立地を捜して居る
(「東京相互書園の新陣容」『読売新聞』(1927.1.20) p.4)

最後期の東京移動図書館

日本女子会館に移ったあとの状況が読売新聞にある。

一円で得られる時局の認識/配達してくれる 移動図書館
芝区芝公園十二号地女子会館内にある東京移動図書館では時局関係書、支那並びにソ連に関する著書を始め家庭、趣味に至るまで約九千冊の蔵書を擁し、サラリーマンを会員に相互に知識の向上を図らうとしてゐる。会員になるには勤務先、住所、氏名に月一円の会費を添へて申込むだけよいが、会員になると読みたい本を電話または葉書で申込めば同会から五マイル以内の勤務先なり自宅へなり配達して呉れる、といつた便利な組織を持つてゐる。(以下略)
(『読売新聞』(1938.8.12夕) p.3)

サービス内容は相変わらずだけど、蔵書が2000冊ほど殖えているね。しかしなぁ女子会館内というのが気になる。この会館は出来たばかり(昭和11年に竣工したらしい)なんで、やっぱり女子教育の方向に行こうとしていたような気がはげしくしてくるなぁ。ん、でも、上記記事では相変わらず「サラリーマンを会員に」とあるか… 謎なり。
昭和14年4月現在の全国図書館リスト(出版年鑑昭和16年版)にはないので、1938年ごろには廃業していたものと思われるが、このリスト、かならずしも無くなったからはずすというものではないので、本当になくなったどうかは微妙である。

経営者・亀田憲六とは?

いやさ、このイチバン知りたいことが不明なり。かろうじて次の記述を見つけたのみ。

東京相互書園の経営者亀田憲六氏は本社よみうり読書会の古い会員であるが
(「読書生としての佐々木照山氏 相互書園に加入し同園を激励す 」『読売新聞』(1926.8.22) p.3)

教育家、三輪田元道は初期から関与していたらしい。1927.6.16に「家庭生活と読書」と題する講演をしたと読売新聞記事にある。

友の会?東京移動図書館後援会

事業充実のために後援会があった。読売新聞の後援で劇団(新築地劇団)による特別講演を日比谷公会堂で興行している(1930.2.25)。
昭和10年の図書館週間の栞にあるという文言を見ると、

文部省選奨優良図書館
便利な図書館
新刊書物が/自由に読める
希望の書物を/手許に運ばせる
便利で経済な/読書機関
会費月一円/配本五哩以内
麹町区内幸町大阪ビル
財団法人東京移動図書館
電話銀座五一八一

とあるが、最初の文部省うんぬんは、文部省から「優良図書館」として金一封が送られると『朝日新聞』(1933.2.19)にあることをいうのだろう。
内幸町太平ビル別館が事務所であったらしい(1930.2.25)。

追記(2009.5.21) 大阪ビルについて

1927.8 大阪ビル東京分館1号館 渡辺節作品集