書物蔵

古本オモシロガリズム

議員先生にイジメられる徳次郎タン

ほんに。。。 初代国会図書舘長もたいへんですのう。
国会会議録に発見した全ニットの記述はこれ↓
別件と一緒に論じられてるので、全ニットの部分だけ抜いてきた。
誤字を直し、読みやすいよう適宜改行した。
『第6回国会 衆議院 図書館運営委員会議録』 3号(昭和24年11月19日)p.7-8

○千賀委員〔康治 せんがこうじ 民主自由党
 (略)いま一つ全日図という労働組合が、図書館の中にあるようでございますが、これは館員の全部が組合員であるのか、一部分が組合員であるのか、この機関紙の全日図の第二号ですか、ここに掲示されておるのは、東京都港区赤坂国立国会図書館内、全日図情報宣伝部、編輯責任者、濱野修三、こういうふうに書いてあります。電話番号も八二の六三六でありますからおそらく国立国会図書館の電話だろうと思います。この組合員の数が百四十部に相当するのかどうか。この点をお伺いしたいのであります。
 この全日図の組合というのは、相当に注目すべき運動をやつておりまして、非常に左翼的な存在であると思います。館長がこの人々の運動をお認めになつてるとすれば、これはゆゆしい問題であると思います。これは秘密でやられておられたのかどうか。その点もお伺いしたいのであります。
 この全日図の掲載するところを、ひとつご紹介しますと、
「戦争が人類に何を与えたか。これは我々が骨身にこたえて体験した筈である。平和こそ人類に幸福をもたらす唯一の真理であることは現在の良識ある誰もが認めているのである。然るに現状はどうか。下山事件と云い、引揚者問題と云い、三鷹事件と云い、何か容易ならぬ潜勢力のうごめきを直感する。直言すれば暴力挑発者とも云える一群の動きが感ぜられる。
 これこそ新たなフアシズムの温床でなくてなんであろう。全日図は進歩的な、民主的なあらゆる団体と協力して、かかる危険な温床を根絶することに組合のあらゆる総力を傾注するものであることを宣言する。」
 まことにこれを見るとわれわれが言いそうなことが書いてあるのですが、その次のところを見ますと、これは全部この表面的の言葉とは逆でありまして、下山事件、引揚者問題、三鷹事件等を通じて、ことごとくこれは政府の陰謀であつて、現在の政局を担当しておるものを攻撃する反面になつております。
「指令第一号発せらる。全力を反動撲滅闘争へ」という赤い見出しの次に、全文は省略しますが「下山事件三鷹電車事件等に於て当局の示した態度は如何なるものであつたか。意識的な事実の湾曲は、勢の赴く所、遂に犯人ねつ造の暴挙にすら至らんとしている。民族意識を捨て、働く者の犠牲に於て、国を売つまで権力に阿更せんとするかれらと、かれらに尾を振るブル新聞の論議は果たして何を物語るのか。社会不安を云々するプル新聞は、社会の公器たる自己の使命の妄想に思いを宿したことがあろだろうか。下山事件も、三鷹事件も事実そのもののもたらすべき社会不安とその事実を曲げた報道がもたらした社会不安とは果たしていづれが大なるものであつたか。」
 こんなことが次から次へと羅列されてあります大きな見出しの中に、「もはやジャーナリズムは「事実を伝える人民の公器」ではなくなつたのである」というような煽情的な文字をたくさん連ねて、これが館員たちに配布されつつあるのでありましよう。

○金森国会図書館
 (略)それから先にお話になりました全日本図書館員組合と申しまするものは、全国の図書館員のつくつておるものでありまして、官立と限らず、公立もあり私立もあるのでありまして、大体の勢力は関西側の方でこれができておつたものであります。それが本年の六月十日に大阪府立図書館におきまして全国大会が開催されたものであります。それができ上ります道におきましては、本年の三月十二日に東京科学博物館において、CIE図書館主任のバーネット氏らも臨席のもとに、組合結成大会が開催されたということになつております。
 私の話の順序がちよつと混乱いたしましたが、事実は昭和二十三年ごろから関西方面に発達いたしまして、それが漸次完備いたし、遂に全国的なものが出来上がつた。これが全日図の性格であります。
 そして結成の趣旨等は、組合が宣言をし、網領を示しておりますが、大体表囲的に申しますれば、普通のありふれた形のものであります。それからその法律上の性質は、一種の組合ではありまするが、国家公務員のみの組織する組合ではございませんから、人事宛に登録するというような性質を持つておるものではございません。労働組合法によるところの組合であつて、それに必要な届出をしておるということであります。
 組合員の数は、私どもこれを直接に、正確に探知する方法は持つておりませんけれども、一応探知いたしましたところば、昭和二十四年の十月に七百名の組合員を持つておる。それは全国のおもなる図書館の職員で持つて出来ておるというふうになつております。
 それから先に仰せになりました機関紙は、今のところ一千部配布しておるということでありまして、その配布先等は大体全国にいきわたつております。そのうち東京が二百五十部配布されておるというふうに調査の結果はなつております。
 組合の財政などは全然組合費でやつておりまして、外から支弁を受けていないというもので、こういうものに対しまして――今日は別でありまするが、これが働いておりました本年の七、八月ごろにおきましては、これは一種の労働組合でありまするために、これをどうするといつて、もし図書館に力をもつてこれを抑制するということになりますれば、そのやりようによりましては、むしろ抑制する方に責任が発生するということにもなろうと思つております。
 そこで私どもは、かような組合活動の内容を知り得る直接の方法をもつておりません。ところが今お示しになりました新聞紙の第二号が出まして、私が偶然これを目に入れましたところ、赤い字で、一見いたしますればはげしい言葉が現われておる。なお見ますと、その事務所が国立国会図書館の中にある。
 こういうことになつておりましたから、私は中の人に調べさせまして、どうして国立国会図書館にこんな事務所があるのか、われわれはそういうもりを許容した覚えがひとつもないということを申して、調べてもらいましたら、たまたまこれの名義者になつております者がわれわれの図書館の敷地の中にありまする一種の寄宿舎といいますか、自費寮といつておりまするその宿舎に寝とまりをしている。そこでその自分のおりまするところを新聞の事務所にしておる。その結果言葉に表わしますると、図書館の中にこの新聞の発行所があるというような形になつたわけであります。
 そこで私どもこれに気づきましたから、さつそくその不適当なるところを補正させることにいたしまして、第三号は別のところで発行するというふうにはつきり書き入れてあります。それから第四号は、もう出ないことになつたらしいのであります。
 そんなようなふうでありまして、この団体は直接には図書館と関係はございません。ただ図書館の職員が、この全日図の組合員であるということであります。それがいかなる性質をもつて活動をしておるかということは、私ども直接感知いたしませんが、実情はそのようなふうであります。でありますから、図書館としてこれに働きかけまする方面といたしましては、事務所を図書館にあるがごとき誤解を生ぜしめた、この点は補正せしめなければならぬというので、これは補正せしめました。なお中にある人に、この組合を脱退せよというさしずをいたしますことは、諸般の法規の制限のもとにおいてのみ話し得ることだろうと思つております。