書物蔵

古本オモシロガリズム

大日本帝国のレファレンス業務と,その理論

図書館史研究には、個別業務史という領域がある(ということにしたい)。
目録の歴史とか、保存の歴史とかね。
で、わちきが戦後期について書いた日本レファレンス史。
ほへー、いつのまにか通説がかわっていた(戦前のとこだけど)。
いま、ネット上でこんなん読んだんだけど…
金津有紀子「戦前におけるレファレンス・ワークの導入」『Library and information science』(44) [2000] p.1〜26
まあ理論や提言とかは大正期に毛利宮彦とかがブチあげたりしてたのは有名なわけだが、実践はぜんぜんだめだった、というのがむかし、わちきがlibrary schoolでならった印象。

実務は従来、帝国図書館日比谷図書館について、一部認められたという萌芽が認められたという評価が、一般的であったが、実際には普及までには至らなかったとはいえ、より多くの図書館において、内容のあるサービスがなされていたことが明らかになってきた。

わちきも、帝都の大きな図書館でちょっぴり、だっだと思っていたよ。
ところが、地方の図書館史・図書館報などもくまなく渉猟した結果、

文献調査の結果、
  帝国図書館
  東京市日比谷図書館
  京都府立図書館
  神戸市立図書館
  大阪市立図書館
においては、実際かなりのサービスが行われたと認められ、また
  新潟県立図書館
  市立名古屋図書館
  京都帝国大学図書館
  秋田県立秋田図書館
については、その実際が定かではない部分があるが、レファレンス・ワークが行われたと推察できる。
  以下の図書館については、読書案内、利用指導など類似の業務は行っていた事が確認された。
  岡山県立図書館
  石川県立図書館
  徳島県立図書館
  東京帝国大学図書館
(略)
さらに、記録に残る限りでは、神戸市立図書館が、電話によるレファレンスにも対応する(1934年)、唯一完全に専任の職員を置く(1940年)、など、高い水準のレファレンスを行っていたことが今回新たに明らかとなった。

ということで志智カクロウの戦後のレファレンス快進撃も、戦前にその土壌があったと著者はいっている。わちきも大賛成なり〜
うーん、やっぱり図書館史は、秘密文書や手写本なんかじゃなくて、パブリッシュされたものを地道にひっくりかえしてもイイ線いくのね。
で、著者はさらに、図書館講習所で1942年からはじまった「図書館参考事務」という科目をひっぱりだしてきておる。
帝国図書館司書官・林繁三が担当した講義で、中身は不明。これがかなり象徴的に重要。
戦前レファレンス理論の到達点とみてよいだろう(けど不明)。
うーん。古書店とかで当時の講義要綱とかひろえんかなぁ。超重要。なのに史料がないんだねぇ。