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タカシの前にクニゾウありっ!`・ω・´)o:県立図書館論の新起源:悪の中央図書館制度

わちき、持論としてclose時とopen時でエントリ内容を変えぬ主義なんだけれど、今回、特別に常連さんだけに公開するね。図書館史トリビアだけど。
2008.2.12に書いたエントリ。実はかきかけUPできぬままの半端記事が何百もあってもーワケワカラン(-∀-;)

2020.7.18、0時公開

これまたウルトラ・スペシャル・レアな図書館本、『中央圖書館長協會誌』(2)(1939.9)が送られてきた。3000円。ウレチイ(^-^*)
Webcatでは東大しか所蔵がわからず、ゆにか等で県立数館にのみ所蔵が確認されるもの。めずらしい所では、台中(台湾)にもある模様。もちろん、例の、志智嘉九郎の提唱にかかる『全国公共図書館逐次刊行物総合目録』(1963-1968)ではもすこし(かつての)所蔵がわかるが。なんとまあ、元締めであった帝国の後身たる国会には所蔵情報がない。不思議(・o・;) きっとあそこは図書館学(という姿見)には興味が失せちまったのだろう…*1 自分がどう見えているか、ってわからんと、ヘンテコなお化粧になっちまいますがの(・∀・)
ぱらぱらと「巻頭の言」を読むと…

「焦点を見定めよ:中央図書館機能の本質」

中央図書館の本質について、「一次的図書館機能」と「高次的図書館機能」をわけて考えるべきとダレカが書いている… ん、この論理ってどっかで聞いたような…

邦造タンキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

これって、有山タカシ(@4AFB)の「第二線図書館」論そのまんまでありますまいか!(+o+)
執筆はどうやら中田邦造のやう… さすが!(゚∀゚ ) 邦造タン。
って、そんなウキャキャしてもらってもワケワカランってか?(^-^;)
いやサ、薬袋先生によれば、

 この「第一線図書館」「第二線図書館」論をわが国で初めて提唱したのは、戦後、日本図書館協会事務局長、後に日野市長を勤め、わが国公立図書館運動の発展に多大の貢献をした有山〓〔タカシ〕である。(略)
 有山がこの考え方を提唱したのは、図書館法成立直前の1950年から1957年にかけてであり、(中略)まず、1950年1月に雑誌『教育と社会』(以下略)

というわけ。
県立図書館論史については、薬袋先生のまとめがあるきりなんだけど、そんなかで県立図書館論の嚆矢として位置づけられとるのが有山タカシなわけなんだが…
じつは昭和25年の有山が嚆矢ではなくて、昭和14年の中田までさかのぼっちまうというわけ(゚∀゚ )アヒャ

理の当然の「発見」

しかしなぁ、考えてみれば当然の「発見」だよなぁ…(´〜`;)
だって、「高次機能」の、具体的事業メニューって改正図書館令で法定されとったわけだし、中央図書館長協会ってば、それを実践せにゃならん館長の集まりなわけで、集まったら集まったで、

中央ったって、オレら、なんでこんなこと(市立への貸出とか)せにゃならんの?

って疑問がでるのはトーゼンなわけで、そこに論理操作ができる人がいれば(邦造タンってば、西田幾多郎門下ですよ!)、

それはネ… ○○だからだよ

となるのは必定。
しかして、あの、びっちりばっちり細かい薬袋先生でもお気づきにならんかったとは、こりゃーもう、戦後の言説空間全体の問題としかいいようがありませんなぁ(*´д`)ノ

日本図書館事業における戦前と戦後は、その政治意識についてはまったく正反対に切り離されているが、事業モデルにおいては実はつながっている部分がある。レファレンス然り、そして県立二次的機能論もまた…

これまた通説を修正するようなトリビアを見つけてしまったことですよ。
とゆーことで。
わちきが鹿爪らしく論文を書くとしたら、こんなぐあいかすら。

「第二線図書館」論の新起源

 この「第一線図書館」「第二線図書館」論をわが国で初めて提唱したのは、表現こそ違え、戦前、石川県立図書館長、後に日比谷図書館長を勤め、わが国公共図書館運動の発展に貢献した中田邦造である。
 従来、有山タカシの提唱(1950年前後)にかかるものとされていたが(薬袋:1986)、すでに1939年、「中央図書館協会」の発行する連絡誌において、「一次的機能」と「高次的機能」という表現でまったく同じ内容が語られている(簡略ではあるが)。戦中期に文部官僚として図書館界に参入した有山が、中田ら中央図書館長たちの着想を借りたとみなしてよいであろう。
 改正図書館令(1933)で制定された「中央図書館制度」は、従来、当時の政治体制との関連だけがとりざたされ、事業モデルとしての評価はなおざりにされてきたために、戦後とのつながりが見えづらくなっている。

なんちて(・∀・)
昭和8年の改正図書館令は、文部省の主導ではぜんぜんなく、図書館界のまともな人々が主導権をにぎってやった図書館振興立法だったのだなぁ。図書館事業基本法案の再評価は根本彰先生が嚆矢だけれども、中央図書館制度の再評価はわちき(及び友人ら)ということですよ。

附1 「第二線図書館」とは何か

大型館が持つ機能の一部のこと。他館へのバックアップ機能とでも言うべきか。このコトバの使用者たる有山タカシはそのように使っていたのだけど(1950年代)、1960年代に、館全体が第二線機能しかない(つまり直接の貸出しやレファレンスをしない)館と拡大されて受け取られ、実際、それを標榜した県立図書館ができた。でもそれは誤解で、県立の第一線機能(来館貸出や来館レファ)のこともきちんと考えるべきだったよね、というのが薬袋先生の、「第二線図書館」論まとめ(1986)*2なのだ。
このまとめ論文の最初に、「第二線」の語の創出者は有山とされている。

附2 「中央図書館制度」研究展望

悪の中央図書館制度については(・∀・)、まともな研究がないよー。って文献はいくつかあるが、みたところ清水正三さんを論破すればすべての図式が崩れるというかなりヤワい構造に通説は乗っている。以下、重要度順に排列。
(略)

*1:図書館研究所の廃止のことをあてこすってるんだよ

*2:薬袋秀樹「第2線図書館」概念の形成--有山嵩の所説を中心に」『図書館学会年報』32(4) p.145〜158 [1986.12]