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古本オモシロガリズム

日本における図書館経営論の系譜【第2版】

先だって、本邦初を標榜する標記の記述をしたけれど、それからいろいろ気になったのでちょっと書き直し。
ってか、もっとわかりやすくつながりも示すというもので。
先行文献としてはほとんど唯一ともいうべき高山先生の『図書館情報センターの経営』(1994)を再確認したら、日本に関してはほんのちょっぴり単行書の羅列(p.11-13)だったんで、わちきの奇想・妄想もあながち新味なしとせずとわかったですじゃ。
近代日本の図書館経営論は、5期にわけて考えるのがよろし。

  1. 「図書館管理法」の時代(明治〜) 役所の出先として館をうまくまわす実務の並列的網羅が「管理法。背景はもちろん、上からの近代化。文部省(帝国図書館関係者)による一連の著作。『図書館管理法』(明25, 33, 45)
  2. 図書館経営」の時代(大正〜)  新しい図書館サービスの事業モデル論、米国流経営術の紹介など。民間セクター(満鉄など)による私立図書館の(質的)繁栄や、東京市立図書館群の自律的経営を背景とする。今沢慈海図書館経営の理論及実際』(1926)。私大という枠で毛利宮彦も。
  3. 「経営指導」の時代(昭和前期)  「改正図書館令」(1933)の時代。県立図書館が直接、町村立図書館の経営を指導するという、県の図書館局ともいうべき権限が法定され、事務官でなく司書の論理で図書館経営ができる法的環境が達成されたが、敗戦によりチャラに。伝・林繁三『図書館管理法関係資料』(1944)
  4. 「図書館管理」の時代(昭和後期〜)  行政実務・行政法規の図書館的読み替えと、行政管理論の影響。背景に、直営による安定的(=静的)経営のもとでの大躍進(量的拡大)がある。「中小レポート」にも管理論あり。清水正三の本がその白眉。理論的には岡部史郎も。
  5. 図書館経営論」の時代(平成〜)  一般経営学の知見の導入せよとの掛け声。日本経済の安定成長から不況への流れが背景に。省令科目改正(1997)による一連の教科書群。 

経営実態史じゃなくて経営論史ですから、そこんとこ誤解なきように。
それに、まえの時代の流れは下層として次の時代にも流れていて、例えば、第5期の「教科書群」はほとんどみな、じつは第4期の枠組みを超えられていない。清水正三公共図書館の管理』(1971)を超えるものはまだないとわちきは見ておるよ。