書物蔵

古本オモシロガリズム

図書館人民史観の行方

NHKブックスの『図書館の発見(新版)』が出るまえにしか意味のない話を。
元版は,1973年,昭和48年にでたもの。よい本。これの新版が今月でることになっている(今日現在,店頭にはない)。
著者はふたり。一方は1960〜70年代の公共図書館の貸出大躍進の立て役者,御大。もう一方は図書館史家として大躍進をイデオロギー的に支えた。
ところがこの大躍進は,経済の右肩上がりや左翼思想の隆盛という経済的・社会的・政治的な,さらに大きな環境によっても支えられていた。その2つが失われた今,お二人はいったいなにを言い遺していくのか。
というのも平成不況と小泉改革で,従来の貸出中心経営が頓挫を余儀なくされつつあるなか,御大をとりまく人たちは,さらに貸出に特化すべきという純化思想を唱えるようになっているのだが…
しかし,肝心の御大は,はっきりモノをいわなくなっていたのだ。
元版は,当時のよい本。ただ,やはり当時の状況にのった良い本なわけで(もちろん,当時の良さは認めるにやぶさかでない),環境が激変した現在ただいま,増補部分で昨今の図書館大戦争についてどう書くか。これは大変むずかしい(わちきが著者なら改訂しない)。
惰性にながれ,とりまく方々同様に,もっと貸出に純化せよと唱える,というのが,まあ順当な予想。でも,ある人がこういったのだ。金正日みたいに言うかもしれませんよ,って。

誠に忌まわしいことだ。図書館員の一部が妄動主義、英雄的貸出主義に走った。遺憾であり、率直におわびしたい

なんて。もし万々万が一,こんな方向で増補されてたら,御大をリスペクトしちゃう (・∀・) まさしく政治家だよ。
あわてていうけど,御大に会ったことはない(史家のほうはあり)。で,いろいろ聞いてみたところ,独特のカリスマのある教養人であるらしい。
で,カリスマなぶんだけ,とりまいている人たちがこんなこと書くと(あ,もう書いちゃったか)どなり込んでくるのではないかと…
((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル ほんたうは怖い図書館界…,ってか∩(゚∀゚∩)
もちろん御大ご本人は,上品な教養人だからどなりこみなどなさらない。
館界が80年代,90年代に方向転換できなかったのはおそらく,御大のカリスマが逆機能を起こしたのだ。